CASESTUDY 導入事例
研究&教育Artec StudioArtec Space Spider
Artec Space Spiderで2000年前の遺骨をデジタルアーカイブ
ドイツ考古学研究所
2023.02.24 更新
◎課題:
ヒマラヤ山脈の奥深くで1990年代後半に発掘された古代の遺骨をスキャンし、この発見を世界中へ発信すること。
◎ソリューション:
Artec Space Spider、Artec Studio
◎結果:
Artec Space Spiderによって遺骨の標本は高解像度なデジタルモデル化され、古代ネパール人の生態や文化を明らかにするために公開されました。
ネパールでの大発見
ドイツ考古学研究所は1990年にネパールのムスタング地方、ヒマラヤ山脈上の海抜3000メートルの標高の遺跡で、驚くほど保存状態の良い大量の動物や人の遺骨を発見しました。この遺骨は遺跡の部屋らしき空間から発見され、考古学者による発掘作業が1991~1999年の間に3回行われました。しかし当時の技術では、現在のような3Dスキャンによるデジタル化ができませんでした。
発見された遺跡
出土した動物や人の遺骨
この遺骨の標本のデジタル化に取り組んだのは、ジュリア・グレスキー博士と研究助手のモニス・ティム氏でした。グレスキー博士はこの遺骨について、2000年以上もの間手つかずで、ほぼ完全な状態で保存されていることから、『非常に貴重』な発見だと語りました。
出土した頭蓋骨のスキャンデータをArtec Studio上で処理するティム氏とSpace Spider(右奥)
この発見は歴史的重要性が高く、北ネパールの人々の移動や文化の歴史を知るための重要な手がかりになるものだったのです。その重要性から、いままでの写真撮影やCTスキャンとは異なる方法を用いた正確な3Dモデルの作成が求められました。
ティム氏らは過去にも3Dスキャナやフォトグラメトリを使用した経験があったため、その難しさを誰よりも理解していました。
研究に最適なスキャニングを実現
Artec Space Spiderによって作成された、高解像度なスキャンデータ
今回のスキャンでは貴重な遺骨にマーカーを貼ることはできないためマーカーレスなスキャンが必要な他、フォトグラメトリでは作成できる3Dモデルの精度が不足しており使用できませんでした。しかし、Artec Space Spiderを使用することで全ての問題が解決しました。
ティム氏とグレスキー博士は、Artec社の提供する簡単なスキャンフローにより、大量の遺骨のスキャンをストレスなく行うことができました。
彼女らが使用したArtec Space Spiderは、国際宇宙ステーションでの使用のために設計された850gの軽量かつ高解像度のスキャナです。小型のオブジェクトや細かい形状のスキャンに適しており、光源に青色LEDを使用しています。また、Artec社製の他のスキャナと同様、スキャン時にマーカーを必要としないため、非接触のスキャンに最適です。
Artec Space Spiderは最高0.05mmの3D精度と0.1mmの3D解像度を誇ります。この高い精度により、研究のための分析にも使用可能な高品質なデータを作成することができたのです。
このArtec 3Dスキャナは、ドイツの3D関連の技術サポートの豊富な経験を持ったArtec社認定ゴールドアンバサダーであるKLIB社から導入されました。CEOであるナット・レーマン氏は、当時プロジェクトのニーズを理解した時から最適なスキャナがArtec Space Spiderであると確信していました。
頭蓋骨の虫歯の進行度までスキャンデータで再現
スキャンのワークフローはとても単純明快で、小さい遺骨であれば数秒のうちにスキャンが完了しました。肋骨や鎖骨、椎骨のような形状が複雑でスキャンが困難なものであってもスキャン時間は10分程度で、データ処理まで行っても約20分で終了しました。
二人が作成した3Dモデルによって、様々な発見がありました。
まだ発掘のプロジェクトは進行しており、収集され分析した遺骨の数は着実に増加しています。現在の作業は研究のための分析とデジタルアーカイブですが、今後は収集品の一般公開や研究を一般向けに公開していくことも視野に入っています。これからも様々な分野でArtec Space Spiderで作成されたモデルは活躍する予定です。
本記事の写真は、ドイツ考古学研究所様のご厚意により掲載しております。