■テクニカルレポーター：ヴァルヴァラ・コネヴァ（Varvara Koneva）

■概要：

あるものを分解し、再び組み立てることで、多くのことを知ることができます。これがリバースエンジニアリングの基本的な考え方です。分解して組み立てることで、その物がどのように作られたか、どのように機能するかについて知る必要があり、その後、部品を交換、改善、分析する方法を知ることができますが、部品を正確に測定することが不可欠です。このとき、3Dスキャンが活躍するのです。3Dスキャンデータから信頼性の高いCADモデルを作成する最良の方法とは？それは、最高のリバースエンジニアリングソフトウェアを使用することです。そこで、このページでは、リバースエンジニアリングに最適なツールをご紹介します。

はじめに

既存の部品や工具を分析し、それらがどのように作られたかを理解するためにはどうしたらよいでしょうか？機械やシステムの機能を明確に理解するには、どうすればよいのでしょうか。これらの問いに対する答えが、リバースエンジニアリングです。リバースエンジニアリングでは、対象物を分解してその機能を確認したり、改良の方法を探したり、レプリカを作ったりすることができます。また、リバースエンジニアリングでは、物理的な対象物の正確な形状をできるだけ早く、正確にデジタル化する必要がある場合があります。今日の革新的な技術のおかげで、私たちは、最も小さな、最も特殊な工業部品から大きな構造物や建設設備まで、事実上あらゆるもののリバースエンジニアリングを行うことができます。

リバースエンジニアリングは、製造業、航空宇宙産業、自動車産業などで幅広く活用されており、製品の改良、カスタマイズ、再構築に重要な役割を担っています。リバースエンジニアリングには、アクセスできない部品や入手できない部品の再現やコピー、品質管理のための対象物の検査、競合製品の可能性の評価など、さまざまな作業が含まれます。

リバースエンジニアリングはどのように行われるのか？リバースエンジニアリングは、対象物を測定してデータを取得し、そのデータを加工してCADで設計する、というのが一般的なワークフローです。現代のリバースエンジニアは、このプロセスで作業を支援するさまざまなツールを手にしており、これにはリバースエンジニアリングソフトウェアも含まれます。

ここでは、リバースエンジニアリングのワークフローを構成するステップを確認しながら、最適なリバースエンジニアリングツールを詳しく見ていきましょう。

リバースエンジニアリングのためのデータ収集と処理

リバースエンジニアリングのためのデータキャプチャとその方法については、多くのことが語られています。この記事では、今日利用されている代表的な方法に焦点を当てます。3Dスキャン、写真測量、CMMマシン、そしてCTスキャンです。これらの技術は、主に使用される産業やアプリケーションに基づいて選択されています。また、時間的・予算的な制約がある場合は、それを考慮した上で紹介します。

【キーポイント】－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

リバースエンジニアリングのためのデータ取得は、手動でもデジタルでも可能ですが、最も一般的な方法は、3Dスキャン、計測グレードの写真測量、CMMマシン、CTスキャンです。

完成した製品や部品のリバースエンジニアリングを行う場合、3Dスキャンは最良の選択となります。3D スキャナはCADモデルを直接生成しないので（点群またはメッシュデータを出力します）、このプロセスの次の段階ではモデリングツールを利用する必要があります。これは、スキャンからCADと呼ばれるワークフローで、専門ソフトウェアが3Dデータを編集可能で設計に適したCADファイルに変換する半自動化されたプロセスです。

このプロセスでは、3Dスキャナによる正確な表面測定が不可欠です。実際、3Dスキャン・データは、実世界のオブジェクトから得た知識を活用し、最も正確にデジタルで表現するのに役立ちます。プロフェッショナルな3Dスキャナで取り込まれたデータは、オブジェクトやシーンの最も完全なジオメトリをレンダリングし、使用可能な3Dモデルという形を取ります。

CTスキャナーやCMMは高価で、移動が困難で、トレーニングに時間がかかることが多いですが、3Dスキャナはその逆で、スピード、汎用性、使いやすさの面でリバースエンジニアリングに大きなメリットをもたらします。

点群の取得に用いられる3Dスキャン技術には様々な方式がありますが、その中でも光学式3Dスキャンは圧倒的に人気があります。光学式3Dスキャンは、構造化光やレーザービームを投影して対象物をデジタルでキャプチャし、複製する非破壊処理です。

現在利用できるスキャンソフトウェアツールは多様で、スマートフォンのアプリからスマートな3Dイメージングプログラムまで、OS、使いやすさ、価格によって大きく異なります。いずれにせよ、よくできたソフトウェアの特徴のひとつは、ユーザーが使いこなすのに時間がかからないことです。最終的に最も重要なのは、データを取得するために費やしたすべての労力が、高い精度、高い解像度、優れた品質を持つ結果に変換されることなのです。

写真測量は、さまざまな角度から撮影した写真を組み合わせて3次元の点群データを作成する計測技術です。計測グレードの写真測量キットは、ターゲット（粘着または磁気）、スケールバー、リファレンスクロス、強力なカメラで構成されています。このようなキットを使って3Dスキャナを使用すると、高精度な3Dモデルを作成するのに良い解決策になります。写真測量で作成した3D点群は、対象物を3Dスキャンした後に得られる3Dメッシュと位置合わせをすることができます。

【キーポイント】－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

どのような測定技術であっても、使いやすいソフトウェアがあれば、そのプロセスを成功させることができます。

ソフトウェアツール

Artec Studio（アーテックスタジオ）

スムーズな3Dスキャン体験は、直感的で時間の節約になるはずです。スキャンが完了したら、3Dスキャンデータをシームレスに処理できるようにすることが、高品質の3Dモデルを作成するための次のステップです。これらを全て行い、優れた結果を得るには、直感的なワークフローとユーザーフレンドリーなソフトウェアが不可欠であり、Artec Studioはまさにそのニーズに応えるものです。

Artec Studioでデータを処理する際、作業の大部分を代行するスマートモードであるオートパイロットと、多用途で完全な制御が可能なマニュアルモードのどちらかを選択することができます。オートパイロットはプロセス全体を管理し、次のステップの指示を出しますが、マニュアルモードはより経験のあるユーザーにとって柔軟性があります。どちらのモードを選んでも、正確さと高い精度が保証されます。

Artec Studioは、ブーリアン演算などの高度な機能により、リバースエンジニアリングのワークフローを合理化するために設計されており、CADエンティティやメッシュを使用してモデルを変更することができます。また、最先端のオートサーフェスツールは、有機的な形状をソリッドCADモデルに変換するのに役立ちます。プロフェッショナルでありながら使いやすいこのArtec 3Dの3Dスキャンソフトウェアは、高速アライメント、新しいメッシュ分割ツール、改良されたセグメントブラシも特徴です。

【キーポイント】－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

オールインワンのソリューションであるArtec Studioは、メッシュのプリミティブなソリッド形状を作成、サイズ変更、位置変更するためのあらゆるツールを提供します。この完全なスキャンCAD機能により、リバースエンジニアリング操作をソフトウェア内で直接実行することができます。CADプリミティブは、モデルのジオメトリと一致させることができ、CADファイルへの変換をスピードアップさせるCADレディ・オブジェクトです。

データを取り込んだのと同じソフトウェアで3Dモデルにプリミティブをフィットさせることで、エンジニアリングプロセスを大幅に加速させることができます。

Artec Studioは、リバースエンジニアリングの専門家にとっても、より複雑な作業の時間と労力を大幅に節約することができます。スキャンと加工が終わったら、業界最高のリバースエンジニアリングソフトウェアにモデルを簡単にエクスポートすることができます。Artec StudioのCADプリミティブは、リバースエンジニアリングのワークフローを大幅に向上させます。主要な幾何学データを抽出し、一般的なCADフォーマットで保存すれば、ワンクリックでメッシュやCADオブジェクトをSOLIDWORKS用のDesign XやGeomagicにエクスポートすることができます。

Autodesk Meshmixer（オートデスク メッシュミキサー）

3Dプリントコミュニティーの「趣味の道具」としてスタートしたものが、メッシュファイルを扱う最先端のソフトウェアに変身しました。Meshmixerです。3Dスキャンの整理、3Dプリントの準備、リバースエンジニアリングプロセスの一環としてのモデルへの追加操作など、Meshmixerがあれば大丈夫です。

少し練習すれば、非常に多様なツールを使ってモデルを操作できるようになります。ファイルを編集スペースにドラッグするだけで、3Dモデルの調整、カット、クリーンアップ、修復、ミキシングを行うことができます。Meshmixerを使うのに、技術的な専門家である必要はありませんし、ソフトウェアの細部まで理解する必要もありません。しかし、Meshmixerの可能性を最大限に活用するためには、ソフトウェアの原点である機能を探求する時間が必要です。

Meshmixerのチュートリアルはオンラインで利用できるので、メッシュ修正に関連するすべてのニュアンスをすぐに学ぶことができます。初心者でも、経験豊富なリバースエンジニアリング専門家でも、すぐにこのソフトウェアになじめるでしょう。

Artec Metrology Kit（アーテック メトロロジーキット）

光学式座標測定システムという全体的な技術であるアーテック・メトロロジー・キットは、産業用途で価値があります。メトロロジーキットは、屋内外を問わず、リバースエンジニアリング、テスト、検査などのワークフローに簡単に組み込むことが可能です。独立した光学測定ソリューションとして、または3Dスキャンを最大限に活用するためのレファレンシングツールとして使用する場合でも、高精度の結果が保証されます。

メトロロジーキットの素晴らしい使い方の1つは、写真測量の結果を1台または複数のArtec 3D スキャナで取得したデータと組み合わせることです。この場合、体積精度は最大15 µm/mに達します。Artec Leoのような頑丈な装置では、1mのスキャンで最大3倍、15mで最大14倍の体積精度になります。もう1つの良いニュースは、メトロロジーキットプラグインを使用すると、3Dスキャンと写真測定のワークフローがそのままArtec Studioで行えることです。

機械部品、航空機部品、ボート、車両、風力タービンなど様々な対象物に対して、完璧に正確な測定や3DメッシュまたはCADエンティティとの比較が必要な場合、Metrology Kitは完璧な測定ソリューションになります。このキットの簡単なプロセスにより、写真測定の結果をワークフローに統合することができ、最小限の労力で正確な結果を得ることができます。

CAD設計業務：マスターストローク

次のステップは、リバースエンジニアリングプロセスの最終目標が何であるかによって異なります。スキャン・データ処理の後、モデルを複製に使用するか、リバース・エンジニアリングCADプログラムで解析と変換を続けることができます。

この段階で、デジタル・モデルを完成させたり、カスタマイズしたりすることができます。通常、複雑な欠陥や非対称性を検出したり、新しい特徴を追加してモデルを修正したり、スキャンした3Dモデルを履歴ベースの特徴モデルに変換したりすることを意味します。

【キーポイント】－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

リバースエンジニアリングプロセスの1つの方法として、3DモデルをCADプログラムに取り込み、メッシュオブジェクトを3Dソリッドに変換することができます。

CADプリミティブをデジタルモデルにあらかじめフィットさせることで、モデルをCADオブジェクトとして簡単にエクスポートし、あらゆるリバースエンジニアリングソフトウェアで使用することができます。リバースエンジニアリングプロセスを完成させるために、最適なプログラムをご覧ください。

Geomagic Design X（ジオマジックデザインX）

Geomagic Design Xは、3DスキャンデータをフィーチャーベースのCADモデルに変換するための究極のソリューションです。Rapidformと3D Systemsの知識と経験を結集して作られたこのソフトウェアは、近年、他の追随を許さない存在となっています。物理的なオブジェクトをスキャンして新しいパーツやサブアセンブリを作成する場合でも、パラメトリックモデルとしてパーツを完全に作り直す場合でも、この優れたプラットフォームが提供するものは多くあります。Geomagic Design Xは、スキャンしたデータから平面、スケッチ、フィーチャーを楽々と（そして自動的に）作成します。CADフィーチャー履歴をSOLIDWORKS、Solid Edge、Siemens NX Creo、Inventor、Pro/EngineerなどのCADソフトウェアに自由にエクスポートして、デザインの可能性を広げ、モデルを完璧な状態に磨き上げることが可能です。

Design Xのユーザーインターフェースは、モデルとなったSOLIDWORKSのインターフェースと同様に直感的です。上部にあるアイコンのリボンには、必要なすべてのタスクが含まれています。ポイント、矩形、リージョン、整列、スケッチ、正確なサーフェシング。左側には、作成したデータ（ポンツ、ポリ、サーフェス、スケッチ）のリストが表示されます。2022年にリリースされたGeomagic Design Xの最新版では、様々なスケッチツール、LOftやExact Surfacing Modelingツールの強化、ターゲットメッシュの置き換えなど、いくつかの便利な新機能が搭載されました。

【キーポイント】－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

Geomagic Design Xは、業界で高い評価を得ている総合的なリバースエンジニアリングソフトウェアです。フィーチャーベースCADと3Dスキャン処理の組み合わせにより、最先端CADソフトと互換性のある編集可能なソリッドモデルを作成することができます。

Geomagic for SOLIDWORKS（ジオマジック・フォー・ソリッドワークス）

リバースエンジニアリングシーンにおけるスーパースター、Geomagic for SOLIDWORKSは、3D Systemsによって設計されたプロフェッショナルプラグインです。その使命は、シームレスなワークフローで、3Dスキャンを編集可能なCADオブジェクトに変換することを支援することです。メッシュ編集、点群処理、自動フィーチャー抽出は、Geomagic for SOLIDWORKSが提供する便利なツールのほんの一部にすぎません。このプラグインは、リバースエンジニアリング用の3Dモデルを高速で作成できる、完全なScan-to-CADソリューションです。

Geomagic for SOLIDWORKSは基本的にGeomagic Design Xの凝縮版であり、SOLIDWORKSで直接開くことができます。SOLIDWORKSのユーザーであれば、特に便利に感じられるでしょう。SOLIDWORKSのユーザーであれば、特に便利に感じることでしょう。使い慣れたインターフェイスで作業しながら、必要なことを1つのソフトウェアですべて行うことができます。

【キーポイント】－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

業界で最も完全なスキャン-SOLIDWORKS統合ソリューションであるGeomagicは、一般的な3Dスキャナーを幅広くサポートし、スケッチ、サーフェス、フィーチャーベースの編集可能ソリッドパーツを素早く作成し、複雑な3Dモデルの構築時間を短縮することが可能です。

多くの3DスキャナはGeomagic for SOLIDWORKSと組み込むことが可能なので、既存のスキャンデータを簡単にインポートすることができます。このプラグインは、使い慣れた直線的なワークフローと直感的なツールバーにより、わかりやすいユーザーエクスペリエンスを維持します。インポートされたメッシュや点群データは、Geomagicのリバースエンジニアリングアルゴリズムで下流の作業に使用することができます。

このプラグインは、設計データの紛失、古い部品のCAD図面の欠如、摩耗や破損した物理部品の再作成などの課題に簡単に対処するために最適です。

SpaceClaim（スペースクレイム）

Image source: Ansys/YouTube

SpaceClaim は、エンジニアがソリッドボディをゼロから作成するために設計された、独立したソフトウェアです。SpaceClaim は、STL ファイルを非常に効率的に処理することができ、ダイレクトモデリングアプローチを採用しています。ノイズの多いスキャンデータも簡単に修正でき、満足のいかないスキャンコンポーネントの修正も可能です。また、このプラットフォームは、モデル編集やディフィーチャリングなどのCAD操作で一般的に遭遇するジオメトリの問題や課題を取り除くことができます。

【キーポイント】－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－
エンジニアリングシミュレーションのスペシャリストによって設計されたAnsys SpaceClaimは、ジオメトリの準備とCADモデルのディフィーチャリングを加速させる優れたツールです。

高度なCADシステムや従来のCADシステムを習得する時間があまりないエンジニアにとって、Ansys SpaceClaimは、プリズム形状や本物の形状からソリッド形状を自動サーフェシングする手法であるスキンサーフェスなどのツールを提供する、素晴らしいソリューションとなります。これにより、全く異なるスキャンデータから、その整合性に関係なく、サーフェスデータを再構築することが可能になります。また、シミュレーションの準備にかかる時間を短縮し、シミュレーション結果に集中することができます。

業界標準のCADツールであるSpaceClaimは、CADワークフローのどの段階でも重宝されます。あらゆるファイルプレパレーション機能を備えたこのプラットフォームは、ジオメトリの準備を加速し、より速く解析に進み、シミュレーション前の時間を短縮することが可能です。CAD システムを深く探求する気がないのであれば、このソリューションは穏やかな学習曲線を提供し、あなたにとって良い選択肢となることでしょう。

次の大きなステップ

リバースエンジニアリングは多くの産業に革命を起こし、その能力は日常生活の変革から国家安全保障の強化にまで及んでいます。

3Dスキャニング技術ほど、リバースエンジニアリングプロセスをスピードアップするものはありません。3Dスキャニングがリバースエンジニアリングにとってかけがえのないものであるのは、高い精度、迅速な分析、そして必要な変更を加えることができるためです。

そのため、最高のリバース・エンジニアリング・ソフトウェアと業界グレードの3Dスキャナの組み合わせは、世界中の製品デザイナーやメーカーにとって真の力となります。