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ラーニング 2023.01.16 更新

【Learning Vol-10】3Dモデルができるまで

【Learning Vol-10】3Dモデルができるまで

■テクニカルレポーター:スベトラナ・ゴルベバ(Svetlana Golubeva)

■概要:

3Dモデルは、あらゆるところに存在しています。私たちが目にするあらゆる物体の背後には3Dモデルがあり、さまざまな業界で広く利用されています。このガイドでは、ゼロからモデルを設計する方法から、3Dスキャナで物理的なオブジェクトをデジタル化する方法まで、最も一般的な3Dモデリング方法を説明します。


はじめに

もしあなたが、自分の周りにどれだけの3Dモデルがあるのか考えたことがないのなら、これから自分の環境を全く新しい視点で見ることになるでしょう。3Dモデルは、テレビ、映画やアニメ、コマーシャル、ビデオゲーム、ソーシャルメディア、モバイルアプリケーション、VRなど、さまざまな場面で登場します。しかし、それらはスクリーン上で見る仮想の物体だけではありません。あなたが持っているコップ、机の上にあるペン、乗っている車、座っている椅子など、、、あなたが今想像している多くの物も、かつては3Dモデルだったのです。

それでは、これらのモデルはどのようにして作られたのでしょうか。

今回は、3Dモデリングの基本を解説し、CADやポリゴンモデリング、3Dスキャンなど、3Dモデルを作成する最も一般的な方法を紹介します。また、最も一般的なモデリングソフトウェアについて説明し、ゼロからモデルを設計する方が良い場合と、3Dスキャナを使用する方が良い場合のヒントも紹介します。

 

3Dモデルとは何でしょうか?

モデリングソフトウェアで作成した機械部品の3Dモデル

コンピュータグラフィックスにおいて、3Dモデルとは、専用ソフトウェアで作成された表面、つまり物体のデジタル表現のことです。3次元空間の点の集まりを、三角形、直線、曲面などさまざまな幾何学的実体で結び、物体を表現する。場合によっては、物体の大きさや形、質感なども3Dモデルで表現することができる。この表現を作成する作業を3Dモデリングと呼びます。

3Dモデルはどこで、どのように使われるのか

3Dモデルは、多くのクリエイティブな職業の一部となっています。エンジニアやデザイナーは、新しい製品を作ったり、既存の製品を再設計したりするために、設計プロセスの一部として3Dモデルを使用します。建築家は、従来の建築モデルを作成する代わりに、あるいはそれに加えて、建物、風景、インテリアの視覚的なデモンストレーションのために3Dモデルを作成します。

ゲームデザイナーは、コンソールゲーム、コンピュータゲーム、モバイルゲーム用の3Dアセットやキャラクターを作成する方法として、3Dモデリングを広く使用しています。

オーストリアの俳優ピーター・シモニシェックは、3Dスキャンをもとに3Dプリントされた実物そっくりの胸像を確認するイメージ

映画製作者は、アニメや実写の映画で、特殊効果やキャラクター、さまざまなオブジェクトに3Dモデルを使用しています。

医療業界では、身体の解剖学的構造を視覚化し、人工装具や歯科インプラントなどのカスタム医療ソリューションを作成し、整形手術の結果を視覚化するためなどに3Dモデルを利用しています。

3Dスキャナでティラノサウルス・レックスの恐竜の足を保存するイメージ

科学や教育の分野では、歴史的・考古学的な作品の保存から、化学物質の可視化、地質学的なモデルなど、さまざまな用途で使用されています。

3Dモデルを作成する主な2つの方法

3Dモデルを作成する方法はいくつかありますが、そのほとんどは、3Dモデリングソフトウェアでモデルを作成する方法と、現実の世界からオブジェクトを取り出し、3Dスキャナでデジタルモデルに変換する方法の2つに集約されます。この2つの方法のメリットとデメリットを理解し、どの方法が最も適しているかを判断する必要があります。

方法その1:3Dモデリング

新製品の試作に取り組む工業デザイナー

3Dモデルを作成する方法として、まず、専用の3Dモデリングソフトウェアを使用してゼロから始める方法があります。この方法は、エンジニア、工業デザイナー、建築家、CGIアーティストなど、さまざまな業界のプロフェッショナルに広く利用されています。

【キーポイント】---------------------------------------- 
まだ誰も作ったことのない、まったく新しいものをデザインする必要がある場合、3Dモデリングは、あなたの想像力を膨らませ、アイデアを実現するのに最適な方法です。

この方法の優れた点は、自動車の新しい部品やビデオゲームのファンタジークリエイターのような全くユニークなもの、あるいは既に存在するがスキャンすることができないものなど、まだ存在しないものをデザインすることができる点です。

例えば、世界的に有名な建築物のモデルが必要な場合、その場所に行って3Dスキャンを手配するよりも、写真やビデオなどの参考資料を使ってゼロから3Dモデルを作成する方がはるかに簡単で費用対効果が高くなります。特に歴史的建造物に関しては、それ自体が困難な場合があります。また、まだ誰も作ったことのない、まったく新しいものをデザインする必要がある場合にも、3Dモデリングは、あなたの想像力を膨らませ、アイデアを実現するのに最適な方法です。

3Dモデリングにはさまざまな手法があり、ゼロからモデルをデザインできるモデリング・ソフトウェアもさまざまです。作成したいオブジェクトとその用途によって異なります。

パラメトリック・モデリング

パラメトリック3DモデリングまたはCAD(Computer Aided Design)は、エンジニアやデザイナーが将来の部品やアセンブリのリアルなコンピュータモデルを構築するために使用される第一の方法です。私たちが日常的に触れている現代の製品のほぼすべてが、3次元CADによるモデリングで作られています。

CADソフトで3Dモデルを設計

この方法では、デザイナーは、実際の物理的なオブジェクトと同じすべてのパラメータ(材料、重量、サイズ、光学パラメータ、物理パラメータなど)を持つことができるオブジェクトの3Dモデルを作成することができます。このモデルは、3DプリントやCNC加工が可能なほか、複雑なシミュレーションを行うこともできます。たとえば、部品のアセンブリを作成して、部品の組み合わせ方を確認したり、部品に加わる力にどう反応するかをテストしたり、部品の中を流体がどう流れるかを監視したり、シミュレーションを使用して部品の製造方法を評価したりすることが可能です。

ポリゴナル・モデリング

このモデリング技術は、皆さんがこれまでに見たことのあるゲームやSF映画のほとんどで、その中核を成しています。ポリゴンモデルとは、ポリゴン(平面的な2次元の形状、三角形、四角形)で構成され、アーティストが3Dメッシュを構築するために修正するものです。CADによるモデリングとは異なり、計測主導型ではなく、コンセプト主導型の手法である。アニメーションやビデオゲームのスタジオでは、映画やゲームのキャラクターから、武器、防具、乗り物、仮想世界全体などのさまざまな3D資産のデザインに、ポリゴンモデリングが使用されています。

自動車のポリゴンメッシュモデル

デジタル・スカルプティング

この方法は、ゲームやアニメーション映画の3Dアーティストにも使われており、有機的で滑らかな形状を持つ超リアルなオブジェクトの作成に最も適しています。また、デザイン、スケッチ、3Dプリント用のプロトタイプモデルを作成する際にも使用されます。そのプロセスは、粘土や石などの本物の素材を使ったスカルプトに非常によく似ています。ブラシのような彫刻ツールを使って、オブジェクトのポリゴンメッシュを操作し、ジオメトリのさまざまな部分を押したり、引いたり、ねじったり、有機的な構造を模倣するために追加のジオメトリを追加することが可能です。デジタルスカルプティングは、ポリゴンモデリングよりもさらに芸術的なスキルが要求され、より綿密で時間のかかる作業となります。そのため、多くの場合、ポリゴンモデリングとデジタルスカルプティングは併用され、最初にオブジェクトをモデリングし、次に3Dスカルプターに送り、最終的な形状にするためのディテーリングを依頼します。

デジタルスカルプトソフトでテレビ番組のキャラクターをデザイン

どのような方法であれ、3Dモデルを作成するために必要なツールを備えた適切なモデリングソフトウェアを選択することが重要です。

初心者に最適な3Dモデリングソフト

これから3Dモデリングを始める方、3Dモデリングに最適なソフトウェアをお探しの方に、お勧めのソフトウェアをいくつかご紹介します。

まず第一に、Blenderを試してみてください。無料であることに加え、多くのチュートリアルや強力なコミュニティがあり、初心者にとって理想的なソフトウェアです。このオープンソースの3Dコンピュータグラフィックスソフトウェアは、視覚効果から3Dモデルのプリンティング、インタラクティブなアプリケーションからビデオゲームまで、あらゆる用途に適しています。

プロや上級者向けには、ポストプロセスの各ステップに特定の機能を持つソフトウェアプログラムが最適でしょう。Autodesk Maya(一般的にはMayaとして知られています)を見てみましょう。高度にカスタマイズ可能なユーザー・インターフェースにより、ゲーム業界や3Dモデリング、3Dアニメーションの分野で愛用されているソフトウェアです。有償の決断をする前に、1ヶ月間試用することができます。

Z Brushで作成したドラゴンの3Dモデル

また、3ds Maxも1ヶ月の試用が可能です。キャラクターモデリング、アニメーション、スキャンしたアイテムの超リアルなレンダリングに特化したアプリケーションで、スピードと使いやすさが魅力です。

デジタルスカルプティングのためのソフトウェアをお探しなら、Z Brushを試してみてください。Z Brushは、大量のポリゴンを持つハイポリモデルを扱う能力で最もよく知られており、Artec Studioと組み合わせると最高です。同様の代替ソフトには、3D-CoatやAutodesk Mudboxがあります。

CADモデリングソフトウェアをお探しなら、機械設計ソフトウェアの業界標準であるSOLIDWORKSをご検討ください。SOLIDWORKSは、エンジニアやデザイナーが部品やアセンブリのモデリングに使用し、図面やアセンブリツールだけでなく、シミュレーション機能も備えています。その他のCADソフトウェアとしては、AutoCAD、Fusion 360、Rhinocerosなどがあります。弊社子会社ではALIBRE DESIGNというソフトウェアも取り扱いしています。

これらのオプションも多くのスタジオで標準的に使用されており、3Dモデルを作成しようとする場合、これらの名前の少なくとも1つを使用して作業することになる可能性が高いです。

方法その2:3Dスキャニング

ストラクチャードライト3Dスキャナによる内燃機関のクランクシャフトの3Dスキャン

3Dモデルの作成方法の2つ目は、スキャニングです。CADやポリゴンモデリングが完全にゼロからモデルを設計するのとは異なり、この方法では、3Dスキャナを使用して、実在する物体、人物、環境の正確なデジタルコピーを作成することができます。この方法は、単独でも使用できますが、より多くの場合、既存のモデリングワークフローに追加して使用します。つまり、スキャンしたものをさらにCADソフトウェアにアップロードして再設計や検査を行ったり、ポリゴンモデリングやスカルプトソフトウェアにアップロードしてさらに手直しや編集を行ったりすることができます。

【キーポイント】---------------------------------------- 
ゼロからモデルを設計するポリゴンモデリングとは異なり、3Dスキャンでは、実在する物体、人物、環境の正確なデジタルコピーを作成することができます。この方法は、単独で使用することもできますが、既存のモデリングワークフローのアドオンとして使用することがより多くなります。

3Dスキャンのプロセスは、スキャナが構成されている技術によって異なります。ストラクチャードライト3Dスキャナ、レーザー三角測量ベースのスキャナ、タイムオブフライト方式レーザースキャナなどがあります。最近のスマートフォンやタブレットは、内蔵または追加されたセンサーにより、3Dで世界を見ることができるため、スキャナとして使用することもできます。CAD、リバースエンジニアリング、品質検査、遺産保護、CGIなど、さまざまな用途に活用できます。

ここでは、3Dスキャンを従来の3Dモデリングと組み合わせて使用した例を見てみましょう。

CAD用3Dスキャン

3Dスキャンは、分析、リバースエンジニアリング、欠陥や元のCADモデルやスケッチからの逸脱の検査が必要な対象物の正確な幾何学的情報をキャプチャするために使用する方法の1つである。特に、製品の最初の3Dまたは2D CADファイルにアクセスできない場合に有効です。何時間もかけてゼロからモデルを作成する代わりに、スキャンするだけで、数分で画面に表示することができます。従来のモデリング技術や、CMMのような接触型の測定技術を使用するよりも、速いだけでなく、より正確な測定が可能になります。

ターンテーブルと3Dスキャナを用いたリバースエンジニアリング用機械部品のスキャニング

3Dスキャナは、対象物を3Dで再現する能力のほかに、従来のモデリングでは不可能だったカスタムソリューションを作成することも可能です。例えば、医師や医療関係者は、患者の脊椎スキャンに基づくカスタム車椅子、カスタムソール、カスタムデザインの義足など、患者の個々の身体パラメータに基づくソリューションを設計するために3Dスキャンを使用しています。

ポリゴンモデリングとスカルプティングのための3Dスキャン

また、ポリゴンモデリングやスカルプティングでは不可能な高度なフォトリアリズムを実現する場合にも、3Dスキャナは最適なツールです。スポーツゲームを専門とする多くのゲームスタジオでは、3Dスキャナを使って有名スポーツ選手の顔をスキャンし、3Dキャラクターができるだけリアルに見えるようにしています。映画スタジオでは、武器や乗り物などの超リアルな3Dアセットをデザインするときや、実際の俳優の外見をベースにしたキャラクターを作成するときに、3Dスキャナを使用します。何時間もかけてゼロから設計するのではなく、実在する物体や人物をスキャナでスキャンし、そのモデルをアップロードして、お気に入りの3D設計ソフトウェアでさらに編集するのです。

3Dスキャナで取り込んだFPSキャラクターの3Dモデルを編集

フォトグラメトリー(写真測量法)

3Dスキャンや3Dモデリングに加えて、写真測量という別のモデリング手法を用いるケースもあります。これは、現実の世界に存在するものをカメラで撮影し(あるいは複数のカメラで撮影し)、それらをつなぎ合わせて3Dモデルを作成するもので、3Dスキャンに近い方法です。

全身3Dスキャン用マルチカメラ フォトグラメトリー(写真測量法)リグの一例

しかし、3Dスキャニングと比較すると、対象物をあらゆる方向から撮影するため、何百枚も撮影しなければならず、時間がかかります。また、3Dスキャナのようにリアルタイムでモデルを構築するわけではないので、何か問題があっても、その場で変更することができません。

フォトグラメトリー(写真測量法)の最大のメリットは、特に質感の高い物体を再現できることで、多くの3Dスキャナよりも優れています。しかし、この方法の欠点は、精度が低いことです。テクスチャーとジオメトリの両方で最高の結果を得るには、3Dスキャナとフォトグラメトリー(写真測量法)を併用することをお勧めします。

3Dモデルを保管・販売するマーケットプレイス

3Dモデルが完成したら、それを利用したり共有したりする方法は複数あります。社内で使用するためにモデルを作成する場合は、コンピュータに保存したり、Dropboxなどのファイル共有サービスにアップロードすることができます。しかし、互換性のある3Dソフトウェアを持っていない人と共有したい場合は、モデルを保存するだけでなく、他の人がそれを見たりダウンロードできるようにするウェブサイトにアップロードするとよいかもしれません。

3Dモデルを保存・販売するウェブサイトはたくさんあります。SketchfabやTurbosquidのKrakenのように、個人でも公開でも自分のモデルコレクションを作ることができるものもあります。例えば、Sketchfabでは、モデルをそのままアップロードするだけでなく、照明などのパラメータを調整したり、埋め込みコードを取得して、YouTubeの動画やツイートと同じようにWebサイトに掲載することができます。

Sketchfab、Turbosquid、CGTrader、Quixelなどのプラットフォームでは、3Dモデルを保存するだけでなく、そのモデルに興味がありそうな人に販売することも可能です。UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンには、独自の3Dモデルマーケットプレイスがあり、ゲーム開発者がゲーム用の3Dアセットを購入することができます。

Autodeskのような最も人気のある3Dモデリングおよびデザインソフトウェアの開発者は、独自の3Dビューイングサイトを持ち、ソフトウェアから直接3Dモデルをアップロードすることも可能です。同様に、Artec Studioのような3Dスキャンソフトウェアでも同様のことが可能で、最終的な3Dモデルをネイティブの3DビューアであるViewShapeにエクスポートすることができます。

 

まとめ

このように、3Dモデルの作り方にはさまざまな方法があります。存在しないものや、まったく新しいものをモデリングする場合は、3Dモデリングソフトで設計することになるでしょう。しかし、すでに存在するものをモデル化する必要がある場合は、3Dスキャンを検討してみてください。時間と労力を節約できるだけでなく、従来のモデリングツールでは実現できなかったような正確な結果を得ることができます。



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