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コラム 2021.11.15 更新

非構造化データ連携による 製造業向け3Dスマート・フレームワークの構築

本コラムでは、モノづくり現場DXプロジェクトの1つとして、「非構造化データ連携による、製造業向け3Dスマート・フレームワークの構築」についてご紹介をいたします。

経済産業省:DXレポート「2025年の崖」とは?

まずはじめに、こちらは経済産業省が発表したDXレポート、”2025年の崖”の要約です。簡単にご説明をすると、今のままレガシーと呼ばれる既存のクローズドなシステムを使い続けると、2025年には毎年最大12兆円の経済損失が生まれると言われています。またIT人材も40万人以上が不足し、IT予算における保守運用費が90%以上を越えるといった試算が出ています。この内容は製造業にとってはさらに深刻で、生産現場に精通したシステム担当者が少ないことが最大のポイントになっています。

製造業におけるDX推進の課題とは?

そして、こちらも2021年10月末に日経新聞のDX TRENDという記事で掲載された内容ですが、製造業におけるDX推進の課題をがまとめられておりました。社内のデータはそのままでは使えない、そしてデータが揃っても分析できる人材や仕組みがない、いざ変革を実行しようとした際の現場余力がない、といった内容となります。

それでは製造業のDXはどこから始めるべきなのでしょうか。今までに何度も社内で討議をしたり、いろいろなウェビナーやセミナーでも討議されていた内容だと思います。私たちが考えるステップがこちらです。まずは現場にはびこるペーパーワーク、これをとにもかくにもデジタルにシフトしない限り先のステップには進むことは出来ません。入り口がデジタルに変わった後に、業務プロセスをデジタルで連動させることが可能となります。連動し始めた次のステップが、ようやく個々のデジタルプロセスの高度化や自動化となり、最終的にはその全体プロセスの可視化を行いながら継続的な改善を行っていく、このようなシナリオを想定しています。そしてここで最も理想的なカタチは、やはり日本特有の現場力を活かした、現場主導のボトムアップ型活動が理想的だと考えています。

ではこのようなシナリオを実現させていくためには具体的に何が必要なのか。私たちはメタデータベースド・アプローチという手法で継続的なプロセス改善をご提案いたします。

データ利活用のカギとなる「メタデータ」とは

この「メタデータ」という言葉、今までに聞かれたことのある方もいらっしゃると思いますが、膨大なデータが氾濫してきている今の時代に世界的に改めて注目されている手法となっております。「メタデータベースド」というのは、データやファイルに対して意味付けを行って、いわゆるプロパティとかタグと呼ばれるものを階層的、仕組み的に付与していく考えのものです。ファイルについているプロパティはOSが一方的に付けているもので、インスタグラムやツイッターで使われるハッシュタグは個人が自由に付けている付箋のようなものです。そうではなく、ある共通の作業を行うチーム内やコミュニケーションを必要とする部門間で、あるルールに基づいたタグを付与していくといった考えのものです。

構造化データと非構造化データの整理

これからご紹介する項目にキーワードとして「構造化データ」「非構造化データ」という言葉が出てきますので、簡単にその分類をまとめてみました。構造化データとはERPやPLM、PDMなど既存に運用している各種エンタープライズシステムやCAD/CAMが持っているデータベース、Excelなどのテーブル情報を指します。そして身の回りに存在する「ファイル」は基本的に非構造化データに分類されます。従来の管理方法ではファイルはフォルダー階層を利用するかファイル名に情報を入れるか、となり、そのファイルの中身に関しては全く外部からは整理することが出来ない情報です。この非構造化データに先ほど申し上げたメタデータを階層的に付けていったものが「半構造化データ」と言われるものになります。

メタデータベースド・アプローチの概念

続きましてこちらの概念図が私たちが提案するメタデータベースド・アプローチです。非構造化データにルールに基づいたメタ情報を付加し半構造化データとします。既存の構造化データはサイロと呼ばれる分断した情報の箱となっていますので、そこから必要データを取り出して我々のプラットフォーム上で再構造化します。半構造化データと再構造化されたデータを連携させて、内部にはメタデータベースとプロセスデータベースを構築します。プロセスについては工程スケジューラーから情報を取り出すことも出来ますし、ワークフローを独自に設計して生成されるファイルのステータスをもとにプロセスを創り出すことも可能です。ステータスは動的タグと呼ばれるもので管理することで、リアルタイムに今の状況を可視化することが出来るようになります。そこからしきい値を与えることで、ボトルネックや改善の指標を新たに生み出す活動へとつながっていきます。これらの活動をトップダウンで行うのではなく、あくまで現場主導で部分的に取り掛かり、どんどん上に積み上げていくという手法となります。

メタデータベースド・アプローチの特徴

改めてメタデータベースド・アプローチの特徴をまとめてみました。
1.ボトムアップ、2.スモールスタート、3.ダイナミックイベントリンク、4.データオリエンテッド、この4つが特徴となります。ボトムアップやスモールスタートは既にご説明した通りで、全ての仕組みを完全に設計しなくても自分の周りのチームや部門から始めていき、段階的に共通のメタデータを付与していくことで、今まで連携していなかったデータやプロセスがつながっていきます。ダイナミックイベントリンクは、今回の仕組みの中でもキーとなる動的タグというものを利用することで、進捗の可視化や停滞やボトルネックの気付きを与えてくれます。最後の特徴が、各プロセスが必要としているファイルや、そのプロセスで生成されたファイルを中心としたプロセス改善が出来るという点になります。

3Dスマート・フレームワーク(3DX)構築のステップ

それでは構築のステップについてご説明いたします。
まずは、半構造化です。デジタルファイルにはどのような種類があり、どのような目的でどのプロセスが生成しているかを整理して、その情報をタグとして付与していきます。そして既存の情報サイロから必要データを抽出して再構造化を行う。次に動的タグを用いて時系列情報を与えることでデジタルプロセスとして同期化させます。同期化の次にデータとそのプロセスの関係性を付けることで進捗の可視化が出来るようになります。しばらく運用をしていくと停滞する部位や手戻りの多い部位が明確になり、最適化を行うためのきっかけをシステムが気付かせてくれます。

メタデータ・カテゴリーのまとめ

私達はメタデータの種類をこのような6種類に分類し、それぞれのメタデータセットを準備しています。そしてこのようなカテゴライズをした後に金型製造業を想定したメタデータ設計の例です。
このようなステップで3DXスマート・フレームワークを構築していきます。

金型製造業を想定したメタデータ設計の例

それではケーススタディとして、金型加工準備プロセスを想定した適用例をご紹介します。
ここでは、既存のフォルダ管理と新たなメタデータ管理の違い、ダイナミックビューというものを使ったリアルタイムなデータアクセス、必要なデータのプッシュ型共有とデジタルプロセスの進捗可視化について、実際の画面で動きを交えながらご説明していきます。

3D PROCESS PLATFORM ケーススタディ

まずはじめに、一般的な既存のフォルダ管理のイメージです。例えば、受注IDごとにフォルダが分かれており、そのフォルダの中には複数の深い階層に分かれて必要なファイルが保存されています。時には個人フォルダがいつの間にか作られていたり、同じファイル名でバージョンの違うものが複数のフォルダに保存されている状態です。

続いて、このファイルに対してメタデータと呼ばれるタグを付加したイメージをご覧いただきます。
こちらがメタデータが付与された状態のイメージですが、このように受注IDからアクセスしたり、プロジェクト名、プロセス、取引先情報やドキュメントの種類、ステータスなど動的な情報からもアクセスすることが可能となります。

例えば受注IDからアクセスをすると、先ほどフォルダ管理で見たような営業から設計、生産準備、製造、出荷といったフェーズ毎のフォルダが表示され、生産準備をクリックするとそのフェーズで必要なファイルや生成されたファイルが表示されます。例えば加工を行うためのNCデータには作成者や日時だけでなく、生成したCAMソフトウェアや加工予定日や予想加工時間、次のプロセス情報など、数多くのメタデータが自動的に付与されています。このようなメタ情報によって、ダイナミックにフォルダを分けて必要なファイルを表示させることが可能となります。

プロセスからアクセスすると、生産準備の加工データ作成フォルダには、先ほど見ていたファイルだけでなく全てのプロジェクトに関わるデータが表示されています。そしてここから受注ID毎に表示をさせると絞り込んでアクセスすることが出来るようになります。

ステータスのようにダイナミックに変更されるメタデータからファイルにアクセスすることも出来ます。今の時点で承認依頼をかけているデータや、不具合が発生して差戻となったデータが何か、なども一目で確認することが出来ます。

このように従来のフォルダ管理では出来なかった全く新しいファイルアクセス方法が出来るようになります。この仕組みを作るのは複雑なシステムは必要なく、ファイルに対してメタデータを自動的もしくはルールに基づいて手動で付与していくだけで、どこからでも簡単に取り掛かっていくことができます。メタデータの付与方法については今回は時間の関係で省略しますが、帳票から自動的に付与させたり、アプリケーションで保存する際に自動的に付与させるなど、いくつかの手法で行っていくことが出来ます。

また各プロセスで必要とするファイル、もしくはそこで生成されたファイルの有無やステータスをもとに、業務プロセスの進捗をリアルタイムに可視化させることが可能となります。このプロセス図はBPMNと呼ばれる国際規格ISO19510で定義されているビジネスプロセスのモデリング手法で描いたものです。MicrosoftのVISIOなどでも書くことは出来ますが、この仕組みの中では各プロセスやタスク、イベントを先ほどのメタデータと連動させることが出来ますので、色やテキストによって今の状況を分かり易く共有することが出来ます。まだファイルが存在していない部分は白く、そしてファイルが生成され承認をされると色が変わり、次のプロセスに移行したのが分かります。このプロセスをクリックすると必要なファイルもリアルタイムに表示されていきます。

このファイルが生成されるまでの時間や承認までに経過した時間をKPIで管理すると、どこのタスクがネックになっているのか、どのプロセスを改善しないといけないのかが次第に見えてきます。現場主導でファイルの生成状況やステータス状況をもとに、プロセス改善を行うことが可能となるケーススタディとしてご紹介いたしました。


このフレームワーク構築において、まだいくつか取り組まなくてはいけない項目が残っています。既に取り組みを進めているものもありますが、こちらが私たちが考えている今後の展開です。
まずはメタデータをモジュール化、テンプレート化していくことです。そしてテキストマイニングなどを用いた自動タグ付けも既に取り組んでいるテーマとなります。さらに国内の他向上や海外拠点、または取引先ともプロセスを共有するためにオブジェクト化を行い、将来的には社内で運用しているプロセスを取引先にも適用して進捗を共有することも可能になっていきます。またデジタルシフトのためには、現在話題になっているノーコード・ローコードアプリとも連携をしていく必要があります。現場主導で行っていくためには、システムベンダーが全て作り込むのではなく、ユーザーサイドで仕組みを構築できる環境が必要だと考えます。最終的にはERPやサプライチェーンにも拡張し、連動させていくことが可能なプラットフォームへと進化させていきたいと考えています。

製造業のDX推進において、最も重要なことはユーザーサイドで構築、改善ができること。システムベンダー側が用意した箱に全て従ってしまっては、「2025年の崖」を一時的に回避できたとしても、また次の崖に直面してしまいます。メタデータベースのソリューションは、今まで実現が難しかった現場主導の革新を強力に推進します。オープンな環境でフレキシブルにデータの整理からプロセスの連動、可視化、そして継続的な改善活動が可能になると私たちは考えます。「真の製造業DX」、現場が主役となりボトムアップ型で推し進めていく。私たちは皆さまと伴走しながら製造現場のDX推進を支援いたします。



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