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コラム 2022.02.15 更新

金属3Dプリンターの方式

金属粉末を使用した積層方式は、金属3Dプリンターではメジャーな方式です。
金属3Dプリント技術の大半は、金属粉末を使用した方式を利用しています。そのため、金属プリンターの種類はその中で細分化されます。粉末をどのように融合させて金属部品にするかという違いによって様々な方式があるような形です。例えば、高エネルギーレーザーを使用して粉末を融着させるものから、結合した金属粉末のフィラメントを押し出すものまで、実にさまざまです。このコラムでは、最も頻繁に使用されている金属3Dプリントの種類と、その仕組み、メリットについてご紹介します。

①パウダーベット方式(Powder Bed Fusion)

FFF方式で造形された部品が無垢(ソリッド)の状態でであることはほとんどありません。ほとんどの部品の内部はインフィル形状になっており、それを覆う形で蓋をします。これは、部品の強度を下げることなく、造形費や造形時間を抑え、熱膨張収縮率による反りや寸法誤差を低減させます。
ここで質問です。造形物を覆うシェルの厚さとインフィルの密度のどちらが部品の強度に影響するのでしょうか?その答えは、「角材曲げ理論」を知る事で理解が出来ます。

現在、金属3Dプリントで最も一般的に使われているのが、このパウダーベット方式です。パウダーベット方式は、ビルドプレート上に微細な粉末層を配置し、部品をスライスした断面を溶融させ、積層していく方式です。パウダーベット方式には大きく2つのタイプがあり、「レーザービーム方式」と「電子ビーム方式」があります。

◆レーザービーム方式 (SLM/SLS/DMLS/DMP/LPBF)
パウダーベット方式の多くは、SLM方式(Selective Laser Melting)を採用しております。SLM方式は、高出力のレーザーを使用して金属層を溶かして部品を作るものです。造形後、ビルドプレートからパーツを切り離し、後処理を行います。現在の金属3Dプリンターのスタンダードであり、ほとんどの金属3DプリンターメーカーがSLM装置を販売しています。


造形中(レーザービーム方式)

金属3Dプリントの中でも歴史のあるレーザービーム方式は、最も技術として成熟しており、金属3Dプリンターを検討する際の評価基準とされることがよくあります。
SLM方式は、他の方式では加工できないような精密で複雑な形状に適しており、歯科/医療から航空宇宙まで、幅広い用途に対応しています。製造量は非常に小さいもの(100mm立方)から大きいもの(800mm x 500mm x 400mm)まであり、造形スピードは中程度です。これらのマシンの精度は、レーザービームの径とレイヤーの高さによって決まります。また、幅広い材料にも対応しているのもメリットと言えるでしょう。
これらの機械は画期的なものですが、設備や後処理に様々な条件があるため、産業用のユーザー(特に大手企業)に限られていました。SLM方式の金属3Dプリンターを取り扱うには、専門の作業者が必要です。プロセスが非常に複雑なため、満足のいく部品を作成し、結果を出すために何度も調整する必要があります。また、造形後の後処理と熱処理が必要になるため、多くの手間や時間を使用してしまいます。さらに、SLM方式が使用する金属粉は非常に危険で、取り扱いにも費用がかかります。
精度よく造形をする事が可能ですが、上記のようなデメリットもあり、金額としても高価なものが多くあります。

◆電子ビーム方式 (EBM)
EBM方式は、レーザーの代わりに電子ビームを使用して積層する装置です。有名どころでいうとGE Additive社です。電子ビームの場合、SLM方式に比べて精度は劣りますが、大きな部品の場合はプロセス全体の製造が速くなります。電子ビーム方式は、SLM方式と同様で形状の制約などの問題点がほとんどなく、航空宇宙や医療分野での利用が多くなっています。しかし、SLM方式と同様に、EBM方式はセットアップに100万円以上のコストがかかり、稼働させるためには専任の技術者が必要ですあり、機械本体の値段も高額になります。

②DED方式(Direct Energy Deposition)

DED方式(和訳:直接エネルギー堆積法)は、金属の原料とレーザーを使って部品を製造する方法です。パウダーベット方式とは異なり、原料(粉末やワイヤー)とレーザーが1つのプリントヘッド上に置かれ、同時に材料の供給と融合が行われます。できあがったパーツは、パウダーベッド方式とよく似ていますが、いくつかの違いがあります。

◆粉末DED方式 (Powder DED/LMD)造形中
粉末DED方式も、レーザービーム方式と同様に金属粉末を用いて金属部品を製造します。粉末をベッドに散布してレーザーで溶かすのではなく、プリントヘッドから粉末を部品に正確に吹き付け、ヘッドのレーザーで部品に融合させるものになります。


造形中(粉末DED)

粉末DED方式は金属粉とレーザーを使用するため、SLM方式で造形された部品と非常によく似ていますが、1つだけ大きな違いがあります。粉末DED方式は、独自の粉末供給システムを利用して、部品の欠陥を「修復」ことができます。粉末DED方式の使用可能な材料、後処理、粉末の管理要件はSLM方式と同様であり、機械の価格も高価なものが多くなっています。

◆ワイヤーDED方式 (Wire DED/EBAM)
ワイヤーDED方式は、粉末DED方式と同じようにレーザーで原料を溶かしますが、原料は粉末ではなく金属ワイヤーです。ワイヤーDED方式はニッチな技術ですが造形時間も短いため、精度や品質が犠牲になっています。そのため、ワイヤーDED方式の部品は、粉末タイプに比べてかなり大きく、精度も低く設計されています。これらの機械同様に高価なものが多くあります。

③バインダージェット方式(Binder Jetting)

バインダージェット方式は、大規模かつ高精度な金属3Dプリント技術であり、SLM方式に代わった金属3Dプリンターの代表的な方式となる可能性があります。この分野は、2年前は、1つのメーカーだけしか採用しておりませんでしたが、現在はさまざまな企業が採用しており、爆発的に拡大しました。この勢いは、金属積層造形を大幅に躍進させる技術となるかもしれません。

金属バインダージェット方式の技術は、従来の2Dプリンター(複合機)が紙にインクを素早く噴射する技術と同じ仕組みです。まず、金属粉をプリントベッド上に均一に散布します。次に、2Dプリンターと同じような噴射ヘッドで、部品の断面形状に合わせて結合ポリマーを噴射し、粉末を付着させます。これを繰り返すことで、完成した部品ができあがるのです。


バインダージェット方式の金属3Dプリンター

バインダージェット方式で造形したパーツを完全に金属化するには、「焼結」という後処理が必要になります。この工程では、造形されたパーツをオーブンの中で溶融温度以下に加熱します。結合材が燃え尽き、金属粉が一体となって完全な金属部品となります。この工程はバッチで行うことができ、複数部品を同時に処理する事が可能です。


粉末を使用する金属3Dプリンターは、このような大型設備(真空気)が必要になる。

バインダージェット方式は、SLM方と比べて主に2つの利点があります。1つ目は、複数のヘッドを使って複数の場所に同時に噴射することで、造形速度が格段に速くなること。2つ目は、1回の製造で同じ部品を数十個作ることができることです。これらのパーツを大きな炉で焼結することで、バッチ処理が可能になります。その結果、バインダージェット方式は、他のどの方式の金属プリンターよりも、部品あたりの処理速度が大幅に向上します。しかし、このスピードと粉末の管理には莫大なコストがかかり、現在この分野では1億円レベルの機械しかありません。

④ADAM方式 (Atomic Diffusion Additive Manufacturing)

ADAM方式は、金属積層造形の分野に新しく登場した技術です。他のほとんどの主要な金属3Dプリンター方式とは異なり、いわゆる粉の状態の金属粉末を使用しません。その代わりに、金属射出成形(MIM)のストックを作るのと同じ方法で、粉末をワックス状のポリマーで結合させ、フィラメントとして提供されます。その結果、粉状の粉末よりもはるかに安全で使いやすい素材となっており、安全対策も必要ありません。ADAM方式フィラメントは、一般的なFFF方式の3Dプリントと同様の方法でノズルから押し出され、金属粉がワックス状のポリマーに均一に分散したパーツができあがります(Green Parts)。造形後、2つの後処理工程があります。1つ目は「洗浄機」でポリマーを溶かし、2つ目は洗浄したパーツを炉で焼結します(バインダージェットに似ています)。焼結プロセスでは、溶解したバインダーによってできた空間を埋めるために部品が収縮し、完全な金属部品ができあがります。


ADAM方式採用のMetalXシステムには、造形機/洗浄機/焼結炉がセットになっています。

ADAM方式はフィラメントベースの造形方式であるため、パーツの制約は、従来のFFF方式の制約とほぼ同じです。ADAMで造形されたパーツは、高い硬度を必要とするパーツには熱処理が、表面仕上げを向上させるためには機械加工や研磨などの後処理が必要になりますが、粉体の管理が不要で、必要な設備も少なくて済みます。ADAM方式は、よりシンプルなプロセスを利用しているため、他の主要な金属3Dプリンターに比べてはるかに低価格であり、装置の価格は通常の金属3Dプリンターの半分以下となっています。Markforged Metal Xはこのプロセスを採用しておりますので、このプロセスについての詳細は、弊社までお問い合わせください。



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