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コラム 2025.10.08 更新

ジュエリーデザインを革新する3Dスキャン技術

ジュエリーデザインを革新する3Dスキャン技術

課題:アジサイの花をデジタル化するにあたり、葉脈の繊細さや花びらの質感、自然な曲線を精密に再現することが求められました。従来の手作業による手法では時間がかかるうえ、細部の表現や十分な精度を確保するのが難しく、代替となる方法が必要とされていたのです。

結果:より迅速で効率的なワークフローの導入により、自然の美しさを忠実に映し出した高精細な3Dモデルがジュエリーデザインに革新をもたらしました。この新しいプロセスによって、設計サイクルは従来よりも50%短縮されています。さらに一度作成したモデルは、改良や製造の工程でも再利用することが可能です。

Artec 3Dを選ぶべき理由:優れたハイブリッドトラッキング機能を備えたArtec SpiderⅡは、高精度かつ高解像度のスキャンを実現します。小型オブジェクトの複雑なディテールを確実に捉えることができるため、ジュエリーデザインに最適なツールといえます。

ソリューション

自然のインスピレーションが技術的な障壁にぶつかるとき

急速に進化する現代の技術環境において、デジタル化はジュエリー業界をはじめ、幅広い工芸分野で不可逆的なトレンドとなっています。いまや多くのデザイナーが3Dテクノロジーをデザインワークフローに取り入れるようになりました。例えば手描きのスケッチを3Dモデルに変換することで、創造的なビジョンと完成品との間にあるギャップを埋めることができます。さらに3Dプリントを活用すれば、貴金属のプロトタイプをこれまで以上に手軽に作成できるようになります。

ジュエリーデザインの世界では、「自然への敬意を込めたデザイン」は変わることのない価値として受け継がれてきました。とはいえ課題も残されています。インスピレーションをいかにして物理的な最終製品へと具現化するか──。伝統的な職人技では花の形を表現する際に手彫りに頼ることが多くありますが、その工程では花びらの細かなギザギザなど、重要なディテールが失われてしまうのです。

たとえRhinoやZBrushといった3Dモデリングソフトを使ったとしても、実際の花の構造をじっくり観察し、それを手作業で再現するにはかなりの時間と手間がかかります。フォトグラメトリもある程度は助けになりますが、重なり合う花びらのほんのわずかな厚みの違いなど、自然が持つ奥行きや立体感を生み出す繊細な要素を正確に捉えるのは今でも難しいのが現実です。

こうした課題を乗り越えるために、中国デザインブランド「MONSECRET」は、Endless Summerのアジサイから着想を得たブレスレット、ネックレス、ヘアアクセサリーのシリーズ制作に取り組みました。彼らの目指したのは伝統的なロストワックス鋳造にありがちな曲線に対する主観的な解釈を超えて、本物の花が咲いているかのような生命感と、自然な非対称の美しさをリアルに表現することでした。

しかしこれ実現するためには、「精度」と「効率」という業界が長年直面してきた2つの課題を乗り越える必要があります。アジサイの花びらは複雑に重なり合い、質感もとても繊細です。植物の形や特徴を深く理解していないと、モデル制作者にとっては花が本来持っている自然な美しさや、生き生きとした雰囲気を表現するのが難しくなります。たとえ多くの時間をかけて手作業でモデリングを行ったとしても、ここまでリアルな精度を再現するのはかなりハードルが高いと言えるでしょう。

文化遺産の保存などさまざまな分野でArtec 3Dが成果を上げている様子を目にし、MONSECRETのデザインチームは3Dスキャン技術が花の自然な形を忠実に記録できることに気づきました。そこで中国のNingbo FLD-TECH社との提携を決めたのです。同社が推奨するハンドヘルド型スキャナ「Artec SpiderⅡ」は、まさにデジタルデザインの新たな扉を開く鍵となりました。

儚い花を永遠の美へと変える

アジサイにはさまざまな種類があり、チームはつぼみから満開に至るまで、開花のさまざまな段階を通してその生命力を表現したいと考えました。これによりデザイナーたちはより豊富な参考資料を手に入れることができ、ひとつのモデルに頼ることで起きがちなデザインの画一化も避けられるようになったのです。チームはArtec SpiderⅡを使って、異なる種類や成長段階のアジサイをさまざまな角度からスキャンし、「自然の収穫物」をそのまま1:1のデジタルレプリカへとシームレスに変換しました。

細部のディテールを精密に捉えるために特別に設計されたSpiderⅡは、アジサイのスキャンに最適なデバイスでした。0.05mmという超高解像度によって、花びらの繊細な質感や滑らかな曲線までも極めて忠実に再現することが可能です。また光学ターゲットと形状特徴認識を組み合わせたハイブリッドトラッキング技術により、壊れやすい花びらにマーカーを貼り付ける必要がありません。わずかな環境振動で花が揺れたとしても、スキャナが即座に位置を補正してデータの歪みを防ぎます。

ある技術者は「Artec SpiderⅡは非常に高い解像度と優れたハイブリッドトラッキングを提供しており、このレベルの性能を実現できるスキャナは他にありません。」と語ります。

アジサイの花びらは非常に薄く層状に重なっているため、スキャン時には形状が崩れてしまう恐れがあります。これに対応するためチームは花束を慎重にトリミングし、スキャン中にさまざまな配置を試みました。またArtec Studioソフトウェアのリアルタイムプレビュー機能を活用することで、スキャンの品質をその場で即座に確認でき、欠損部分があればすぐに再スキャンが可能となり後工程での大幅なモデリング修正を避けることができました。完成した3DモデルはArtec StudioからOBJやSTL、FBXなどの形式でエクスポートでき、ZBrushやBlenderといったデザインソフトウェアとのシームレスな連携が可能です。

Artec Studioでスキャンデータの位置合わせと統合を行った後、デザイナーたちは精密に仕上げられた3Dメッシュをアーティスティックな加工のためにZBrushへインポートしました。個々の花びらはモジュラー要素として抽出され、指輪やネックレス、ヘアアクセサリーのベースとして組み立てられています。

形状の彫刻とトポロジーの再構築を通じて表面の滑らかさが向上し、花びらの折り目が加えられたことで、花房は自然なリズムを保ちながらより立体的で生き生きとした開花表現が可能となりました。一つのアジサイからは最終的に十数種類もの異なる形状が生み出され、多様な用途に対応できるようになっています。かつては数週間を要していた手作業によるモデリングと比較すると、新たなデザインプロセスは約50%の時間短縮を実現しました。さらにすべてのカーブやテクスチャーが、Endless Summerのアジサイが持つ本物の生命力を見事に体現しています。

「市場で新鮮な花を選び、Artecスキャナで3Dスキャンを行い、Artec Studioでベースメッシュを構築しました。その後、処理による修復や芸術的な仕上げを施し、金属鋳造まで進めたところ、合計で25日かかりました」とデザイナーたちは説明しました。また、「通常、このプロセス全体には約1か月を要しますが、3Dスキャン技術を導入することで1週間の短縮が実現しました」とも付け加えています。「さらに3Dスキャンは反復作業の削減にも大いに役立ちました。ベースモデルを変形・修正できるため、後からの調整がより柔軟に行えるようになりました。このスキャナはアジサイの自然な細部を忠実に捉え、花の有機的な曲線や非対称の美しさをそのまま保存しました。これにより、製品デザインの独自性を一層高めることができました」と述べています。

ファッションデザインのエコシステムを再定義

デジタルのアジサイモデルを実際のジュエリーに落とし込む過程で、3Dスキャンがもたらした変革は一つの作品づくりにとどまりませんでした。この技術のおかげで、自然からのインスピレーションがジュエリーデザインの根幹となることが可能となりました。例えばイチョウの葉は対称的なイヤリングのフレームワークとして用いられ、松ぼっくりの鱗片は反転・複製されることで、層状のネックレスペンダントを形成しています。

さらにキャプチャされたスキャンデータは拡大・縮小やねじり、ミラーリングなどの加工に対応しており、一つの植物から無数のバリエーションを生み出すことが可能で、それぞれのカーブも自然なまま保たれています。こうした技術により、3Dスキャンはデザイナーたちの「自然を身につける」という目標の実現を支援しただけでなく、ファッション業界に前例のない創造的可能性を切り開く役割を果たしました。

ブランドにとって3Dスキャン技術の導入は大きなメリットをもたらします。自然の美しさをジュエリーデザインに取り入れてブランドの独自性を高めるだけでなく、カスタムジュエリーの製造サイクルを大幅に短縮し、試行錯誤にかかるコストも効果的に削減できます。従来の工芸技術では数週間を要していた工程も、花のスキャンから完成モデルの納品まで、わずか数日で完了できるようになりました。

さらに3Dスキャンモデルは非常に汎用性が高く、その後のデザイン展開にも容易に活用できます。デザイナーは仮想環境内で素早く細部を最適化できるため、柔軟性と創造性の双方が大きく向上します。3Dスキャンはもはや単なるツールにとどまらず、効率的なブランド成長を促進し、デザイン革新を生み出す中核的な役割を果たす存在となっています。これにより競争の激しい市場において、ブランドは明確な優位性を獲得しています。

今後3Dスキャン技術の導入はさらに加速すると見込まれています。コストの低下やAIアルゴリズムとの統合により、業界標準となることが予想され、より多くのブランドが自然からのインスピレーションとデジタル製造をシームレスに結びつけることが可能になるでしょう。ファッションデザインの分野においては、スキャンしたレースや刺繍生地を3Dパターンメイキングやバーチャル試着に活用することが期待されています。

ファッションテックにおいてARやVRと組み合わせることで、「デジタルツイン」ジュエリーの制作が可能となり、消費者体験はメタバースの世界へと拡張されます。3Dスキャンは、従来のファッションにおける創造の枠を打ち破り、デザイナーにとって新たな「筆」となりました。さまざまな用途でその力を発揮し、業界を次の時代へと導いています。

3Dスキャンとファッションデザインの融合が進む中、将来的にはすべてのデザイナーがスキャナを携え、街角の一輪の花や一枚の葉を有形のファッションアート作品へと変貌させる日が訪れるかもしれません。『Endless Summer』のデジタルアジサイは、その革命の始まりに過ぎないのです。



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