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コラム 2025.08.13 更新

Artec Leoで象の全身をデジタル化

Artec Leoで象の全身をデジタル化

課題:博物館において、まるで象が目の前にいるかのような体験を提供するために、象の皮膚や骨格、内臓などを含む全身を高精度でデジタル化すること。

ソリューション:Artec Leo、Artec Space Spider、Artec Studio

結果:世代を超えた人々に、19世紀にヨーロッパへ送られた自由奔放なサーカスの象「ミス・ジェック」の物語を伝える、インタラクティブな博物館展示。

Artec 3Dを選ぶべき理由:ワイヤレスで一体型のArtec Leoであれば、古い骨などの大規模で複雑なジオメトリをキャプチャするための操作も、初心者であっても素早く直感的に行うことができる。

アジアの象は、ヨーロッパ大陸全土で取引される外来の品物として支配者や上流階級の人々への贈り物として扱われ、長く悲劇的な歴史を耐え抜いてきました。

しかし、ミス・ジェックのように逸話が残る象は他にはいません。歴史的記録によるとミス・ジェックは1806年頃にインドを離れ、贈り物としてではなく芸を披露するためにヨーロッパへ送られました。動物園が次々に開園し始めた時代に、ミス・ジェックはイギリスやフランス、ドイツ、アメリカのパレードなどのイベントで瞬く間に大人気となり、1837年までの30年以上にわたり脚光を浴びることとなります。

1837年、短気になっていたうえ旅の疲れが溜まっていたミス・ジェックは、スイスのジュネーヴでの展覧会において訪問していた聖職者の腰に攻撃的に掴みかかりました。このことでミス・ジェックはPorte de Rive近くの水路に幽閉されたものの脱走し、夜には吠えながらローヌ川の川岸を全速力で駆け抜けていきました。再び捕らえられたものの更に13人を負傷させたうえに世話係も3人殺してしまったため、殺処分の命令が出されました。

事件の後ミス・ジェックは殺処分され、死骸は解体されました。その後この象の皮膚は、著名なパリのデイロル剥製保管所に保存されました。トゥルネー自然歴史博物館・生態動物園の創設者の一人であるバルテレミ・デュモルティエは細胞組織を入手し、この保管所から持ち帰りました。これは現地ベルギーでは初めてのことであり、それ以来、地元の職人によって記念品として展示されています。

現在博物館の館員と共同でHaute Ecole en Hainaut社のデザイナーであるニコラス・ヴァグジは、ワロン=ブリュッセル共同体地方の宝であるミス・ジェックの物語を現代の人々に広める方法を思いつきました。ヴァグジはArtec Leoを活用し、ミス・ジェックの体を来館者が学習したり鑑賞したりできる3Dモデルへと変貌させました。このモデルはトゥルネーの当博物館が所蔵する皮膚の現物標本と、ゲント大学博物館で展示されている年齢が若い象の骨格を基に作成されています。

ミス・ジェックのデジタル化

論文のためにミス・ジェックのデジタル化を行うことを決めたヴァグジには、幸いなことにゲント大学博物館の独自のコレクションに展示されている骨格が、ミス・ジェックと同程度の大きさであったという条件が揃っていました。Artec Leoの内蔵ディスプレイとワイヤレス設計により、象の骨格のキャプチャは迅速かつ簡単に行うことができ、さらに高精度な仕上がりを確実に得ることができました。

「スキャンはかなり簡単な作業となり、皮膚のひび割れもすべて取得することができました」とトゥルネー自然歴史博物館・生態動物園の収集管理者であるルーカス・テラーナは説明します。「Artec Leoを使うことで、プロジェクトをいくつかの部分に分割し、鼻、頭、脚、背中を別々にスキャンすることで、高品質なテクスチャをキャプチャすることができました。」

ヴァグジは象の皮膚と骨格のキャプチャを完了すると、次に内臓のモデル製作に取り掛かりました。しかし細胞組織をデジタル化することは不可能であると分かったため、代わりにヴァグジはスケッチを行い、調査に基づく情報のみをもとに本物に近い出来栄えを実現させました。

メッシュからのインタラクティブなモデルの作成

ヴァグジのモデル製作は、Artec Leoに付属している処理ソフトウェア「Artec Studio」で行われました。3Dスキャニング後、同ソフトウェアのオートパイロット機能がモデル製作の工数削減に大いに貢献しました。メッシュ簡素化機能は不必要なデータの削除を行い、当初1000万にも達していたポリゴン数の削減を可能にしました。その結果、ファイルのエクスポートもより容易に行えるようになりました。

「それどころか、Leoはプロジェクトに必要以上の能力を発揮しました」とテラーナは話します。「当初はHDモードを使用しており、多くのデータが取得できました。」続けて、「象の皮膚には同じテクスチャを持つ部分が多いため、今回の場合では追加のディテールは必要ありませんでした。それでも、最終的には非常にリアルな出来栄えを得ることができました。」と話します。

ヴァグジはArtec Studioから出力した3Dモデルをモデリングソフトで編集し、自らの作品に命を吹き込みました。その結果、ミス・ジェックの物語を現代に蘇らせるタッチスクリーン展示物が完成しました。

「このインタラクティブなアプリケーションでは、象の皮膚の色を変えて内臓まで見ることができ、タップすることでさらに詳しい情報が表示されます」とテラーナは付け加えます。「現時点ではテスト用のベータ版プロジェクトですが、将来的には徐々に進化させ、一般の人々に利用していただけるようさらに詳細な情報やインタラクティブな機能を追加していきたいと考えています。」

3Dで希少種を永遠のものに

ヴァグジが製作したモデルはアプリケーションへとアップロードされ、ミス・ジェックの一生を描いた展示物の一部として披露されました。しかし、トゥルネー自然歴史博物館・生態動物園の取り組みはそれだけに留まりませんでした。現在、絶滅種のモデルを新しく製作しようとしているのです。

「当博物館の貴重な所蔵品をいくつかスキャンしてみたいですね」とテラーナは締めくくります。「例えば、野生で絶滅した動物がいるとします。そういった種についてスクロールしながらさらに調べることのできる、通し番号付きの雑誌を作ることができるかもしれません。」

非常に小さい動物のデジタル化に向け、博物館はArtec Space Spiderを使用して作業の加速化を図りました。Space Spiderはブルーライトテクノロジーを備えており、細かいディテールのキャプチャをより効果的に行うことができます。

ヴァグジ、テラーナ、そして博物館の職員であるクリストフ・レミーは、すでに高度な技術がどのように伝統的な教育と連携するかを立証しており、今日のデジタル世代が歴史的な物語と現代の環境的課題の両方に取り組む手助けをしています。



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