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3Dスキャナで部屋をスキャンする方法
あなたにとって部屋をスキャンする目的はなんですか?また実行する際に注意すべきことはどんなことでしょうか?まず第一に、部屋のスキャンに使用する3Dスキャナがそのタスクに適しているかを確認することが重要です。
この記事では部屋をスキャンする目的、方法、それに最適な3Dスキャナ、そして考慮すべき点について紹介します。
「スキャン」と聞くとまず最初に思い浮かぶのは、“物体”をスキャンすることではないでしょうか。
たとえばスキャンを行うことで、カスタム自動車部品をスキャンしてリバースエンジニアリングを行ったり、工場の生産ラインで品質管理を行ったり、医療現場でオーダーメイドの補綴(義歯など)を作成するために精密な計測データを取得したり、自分の体をスキャンして正確なサイズを把握し、自分にぴったり合う服を探したりすることができます。
しかし今ではテクノロジーの進化により、もっと大きなスケールでのスキャンも可能になってきています。
たとえば、一部屋まるごとスキャンすることもできるのです。
家の外観をスキャンするのは比較的よく知られた方法です。建物全体や正面のファサードをスキャンする手法について、すでにご存じの方もいるでしょう。では、家の内装を3Dスキャンする場合はどうでしょうか?四方の壁や天井、床、窓、家具などをスキャンするにはどうすればよいでしょうか?
あなたは新しいインテリアデザインのコンセプトをデジタル上で可視化しようとしているデザイナーかもしれません。あるいは、崩れかけた歴史的建造物の壁を記録しようとしている歴史家かもしれません。いずれにしても、部屋をまるごとスキャンする必要が出てくることがあります。次からはその方法をご紹介します。
もちろん可能です。ただし、まずは取得したスキャンデータが「使用に耐える品質」であり、「完全性」が確保されていることを確認することが重要です。
部屋の細部まで正確にスキャンするには、広範囲かつ高精度なスキャンを可能にするソリューションを検討する必要があります。
たとえばArtec Ray Ⅱを使えば、位置合わせやトラッキング、データの統合といった複雑な作業に悩まされることなく、広い空間や平坦な面をスピーディにスキャンできます。
またRay Ⅱはノイズが非常に少ないため、後処理の手間が軽減され、作業全体がぐっと効率的になります。
一方で部屋の奥まった隅や複雑な形状など、アクセスが難しい部分までスキャンしたい場合にはRay Ⅱの最大到達距離130mを活かしつつ、Artec Leoなどのハンドヘルド型のスキャナを併用するのが効果的です。
Artec Leoはスキャン中は内蔵ディスプレイでリアルタイムに3Dモデルの構築状況を確認できるため、見落としを防ぐことができ、スピードと使いやすさの両面で大きなメリットがあります。
次に部屋をスキャンする「必要がある」または「スキャンしたい」と考える理由について見ていきましょう。
多くのスキャン用途と同様に、その可能性は実に多岐にわたります。ここでは3Dスキャンが特に役立つ代表的なシーンをご紹介します。
空間の正確な把握
これまでに何かを測定したことがある方なら、小さな物体や単純な直線を除けば測定作業がいかに時間がかかり、かつ精度にばらつきが出やすいかをご存じかもしれません。特に高い正確さが求められる場面ではなおさらです。その点3Dスキャンを活用すれば、手動測定で起こりがちな手ぶれや誤差を大幅に減らすことができ、スピーディかつ安定した測定結果が得られます。
たとえば、住宅のリフォームや売却、賃貸を検討している場合、キッチンなどの空間をスキャンすることで、正確な寸法・面積・レイアウトを把握することが可能になります。
アニメーション制作での活用
映画制作やビデオゲーム開発を行っている方にとって、家の内部を3Dスキャンすることは大きな武器になります。空間をスキャンすることで現実の部屋がそのままデジタルデータとして再現され、色や形、大きさはもちろん、新たなキャラクターや特殊効果を加えて自由に演出できるようになります。
この手法は、特にホラー映画のようなジャンルで真価を発揮します。リアルな空間から始めることで、非現実的な世界観もより説得力のあるビジュアルとして表現しやすくなるのです。
たとえば、不気味な古びた地下室をスキャンしておけば、あとはその中にゾンビを配置するだけですぐに恐怖感あふれるシーンが完成します。
また、部屋のスキャンはリアルなVR空間を作るうえでも非常に有効です。仮想空間の元となる環境が実際に存在する空間のスキャンデータであれば、VR体験はより没入感のあるリアルなものになります。
モデルとしての活用
たとえばあなたがインテリアデザイナーで、将来の住まいプランをクライアントに提案するとしましょう。そのビジョンを伝える最も効果的な方法は、実際の部屋にそのデザインを重ね合わせて見せることではないでしょうか。
家具やインテリアのデジタル化はすでに多くの企業で取り入れられており、業界のスタンダードになりつつあります。
部屋のスキャンデータを基にすれば実際の空間にぴったり合った高精度のモデルを作成できるため、従来よりもはるかにリアルで説得力のあるプレゼンテーションが可能になります。
さらにそのモデルは完全にデジタル化されているため、技術的な最終仕上げもスムーズに行えます。
この手法は、インテリアデザイナーだけでなく、建築家やキュレーターにとっても有益です。
独自の空間を構築し、アイデアを実物のモックアップや高額なデモ制作に頼ることなく、極めて現実感のある形でクライアントに伝えることができるのです。
保存
見ることはできても触れてはいけない場所があります。例えば古代寺院を探索したり、美術館の貴重な遺物の前に立ったりするとき、損傷の心配をせずにその空間をじっくり観察できると想像してみてください。空間を一切乱さずに詳細な情報を得る必要がある場合、3Dスキャンが最適な手段となります。
時間と精度
テーブルや箱をメジャーで測るのは簡単です。ただしそれが「部屋全体の測定」となると話は別です。ミスのないように細心の注意を払いながら、できるだけ効率よく作業を進めたい…そう考えるのは当然です。
しかし残念ながら、「スピード」と「精度」は必ずしも両立しないことが多いのも事実です。
そんなときこそ3Dスキャンが力を発揮します。部屋全体をすばやくスキャンすることで、壁・床・天井など、すべての面の正確な寸法を短時間で取得可能です。結果として精度の高いデータを手に入れながら、作業時間の大幅な短縮も実現できます。
3Dスキャンを行う手段のひとつに、「長距離レーザースキャナ」があります。
たとえば Artec Ray Ⅱを使えば、レーザー技術により空間全体をスキャンし、点群(ポイントクラウド)と呼ばれる3Dデータを生成することができます。部屋全体を正確にキャプチャするには、スキャナを複数の位置に設置する必要がある場合もありますが、Ray Ⅱであれば最大130メートルの範囲をカバーできます。たとえ中世の城の大広間のような広い空間であっても、その全体をしっかりスキャンすることが可能です。
スキャンのプレビュー確認までは最短でわずか2分です。さらにRay Ⅱのような高速レーザースキャナには、他にも大きな利点があります。
それはサブミリメートル単位の精度で正確な測定ができること、そしてスキャン対象の輪郭だけでなく、微細なディテールまでも高い解像度でキャプチャできる点です。
部屋の一部をより高い解像度でスキャンする必要がある場合や、アクセスが難しい場所をキャプチャしなければならない場合には、複数のスキャナを組み合わせて使用することをおすすめします。
たとえば、Artec Ray ⅡとArtec Leoを併用することで、それぞれの強みを活かすことができます。
Ray Ⅱで広範囲を高精度にスキャンしつつ、Leoで細部やテクスチャの詳細を補完することで、必要な部分を高解像度かつ細部を保った状態で記録することが可能です。
Ray Ⅱのような長距離スキャナを使用する場合、多くの作業はスキャナ本体が自動で行います。レーザーが部屋全体を自動でスキャンしてくれるので、その間は待つだけです。
一方Artec Leoのようなハンドヘルド型スキャナは、自分の手で必要なエリアに持ち込んでスキャンするスタイルです。空間内の特定のポイントや細かい対象物を自由に移動しながら手動でスキャンできるのが大きな特徴です。
どの3Dスキャナを使用する場合でも、目印のない壁面や装飾のない空白の表面はスキャンが難しくなることがあります。
しかしArtec Ray Ⅱであれば1回のスキャンで広範囲をカバーできるため、細かく何度もスキャンしてデータをつなぎ合わせる必要が少なくなります。さらにRay Ⅱに付属するArtec Studioでは、ターゲット(マーカー)を使用せずにRay Ⅱのスキャンを自動で整合(位置合わせ)させる機能が搭載されています。
ただし、そのためにはスキャン時に十分なオーバーラップ(重なり部分)と特徴形状が確保されていることが重要です。
これは後処理の際に、テーブルやカーテンといった特徴のある物体を参照ポイントとして利用できるためです。こうした幾何学的な特徴を使用することで、スキャンデータ同士の位置合わせや統合が行いやすくなります。
一方でターゲットや球体リファレンスの使用が必要なケースもあります。その際に知っておくべきポイントについては次でご説明します。
適切なスキャン環境を整えるには
当然のことながら、部屋をスキャンするにはまずスキャンする「部屋」が必要です。しかし実際のスキャン作業に入る前に、いくつか注意すべき重要なポイントがあります。
まず第一に適切な照明です。十分な明るさがあり、かつ均一なライティング環境が整っていることが、高品質なスキャンを実現する鍵となります。
次に光沢のある素材や透明な物体、反射しやすい材質です。こうした素材はスキャナがうまくデータを取得できないことが多く、スキャン精度に影響します。
このような場合は、スキャン用のマットスプレー(コーティングスプレー)を使用する、あるいは問題となる物体を一時的に部屋から取り除くといった対応が有効です。
直角や床面、複雑な空間への対応
部屋が左右対称で、完全に平らな面ばかり──ということはまずないでしょう。
実際には角のある間取りや階段、仕切りのある空間、家具の裏側など、スキャンが難しい場所が多く存在します。
特に複数階にわたる構造や階段が途中で分かれているような建物では、スキャナを適切な位置に複数回配置する必要があります。コーナーを曲がる場合や、キャビネットの背後までしっかりスキャンしたい場合も同様です。
レーザー3Dスキャンの仕組みとハンドヘルドスキャナの使いどころ
身の回りを3Dモデル化するにはまず適切なスキャナを選択することが重要です。小~中物にはハンドヘルドスキャナが最適です。より大きな対象物の場合はRayⅡのようなレーザースキャナがおすすめです。
部屋を用意して必要なスキャナを確保し、スキャン対象を整えソフトウェアの準備も完了していれば、作業を始めるための準備はほぼ整っています。
ですがここで最後に考慮しておくべき重要なポイントがいくつかあります。
ターゲット
位置合わせをスムーズに行いたい場合は、チェッカーボードやターゲット用の球体があると便利です。特にArtec Studioの自動位置合わせ機能が使用できない場合、これらのターゲットは高精度な位置合わせをサポートし、複数のスキャンデータを正確に結合するのに役立ちます。
距離
スキャナによっては、測定可能な距離が非常に重要になることがあります。使用するスキャナは部屋の隅や天井までしっかり届いていますか?
もし届いていない場合、より近い位置に移動してスキャンする必要があるかもしれません。
フォトテクスチャ
フォトグラメトリは特に3Dスキャンと組み合わせることで、より高精度な結果を得られることが多いです。
場合によってはどちらか一方で十分ですが、両方を組み合わせることで課題を解決できることもありますので、ぜひ検討してみてください。