CASESTUDY 導入事例
Artec RayⅡ医療研究&教育Artec Studio
Artec Leoでキャプチャされた驚くほどリアルな人体の3Dモデルを用いた授業
シンガポール国立大学
2026.02.02 更新
【課題】
学生の学習意欲をより一層引き出し、医療現場で即戦力として活躍できる人材を育成するため、実在の人体部位から高精細な3Dモデルを制作すること。
【結果】
四肢、臓器、全身の詳細な3Dモデルを360°で撮影し、骨盤周辺も含まれた、産科や婦人科に必要なすべての重要な特徴を備えた3Dモデルを作成
■ ソリューション
■ Artec 3Dを選ぶ理由
高速かつワイヤレス、そして直感的な操作性を備えた「Artec Leo」は、実物に忠実なデジタル教材をスピーディに制作したいと考えている初心者の方に最適な一台です。
スキャンされたデータは、専用ソフトウェア「Artec Studio」を通じて、STLやOBJといった汎用フォーマットへスムーズに変換されます。これにより、実際の形状を忠実に再現した複製物の3Dプリントや、VR(仮想現実)ヘッドセットを用いた没入感のある視覚化が簡単に実現します。

Artec LeoとArtec Studio上の脳の解剖学的3Dモデル。※NUSのご厚意により掲載
医療分野において、3Dテクノロジーはもはや欠かせない存在となっています。患者への術前説明から、学生への具体的な術式指導に至るまで、3Dプリントやデジタルによる解剖学的モデルは、事前の視覚化において最適なソリューションです。
しかし、人体のデジタル化には「精度」という大きな壁が立ちはだかります。体内は極めて複雑な構造と微細なディテールに満ちており、キャプチャは容易ではありません。例えば、入り組んだ形状を形成する血管は、スキャン時のわずかな動きで生じる「モーションアーチファクト(ブレ)」の影響を受けやすく、正確な再現が困難な部位の一つです。
さらに、テクノロジー導入における実用性の課題もあります。理論上、3Dモデルは教育に極めて有効ですが、スキャンしたデータから3DプリントやVR/AR(仮想・拡張現実)に活用できるデータを生成するには多大な手間がかかり、肥大化するファイルサイズも大きな負担となります。詳細なモデルほどデータ容量が重くなり、VR環境でのスムーズな動作を妨げてしまうのです。
これらの課題を解決するため、シンガポール国立大学(NUS)は「Artec Leo」を採用し、3D教育素材の制作を開始しました。ワイヤレスかつターゲット不要なこのスキャナは、人体をわずか数秒で、完全非接触のまま高解像度にキャプチャできます。その機動力と性能は、保存状態が極めてデリケートで「湿り気」を帯びた生体標本から、リアルな3Dモデルを生成する上で、まさに理想的な選択肢となっています。
超高速で柔軟な対応が可能な人体のキャプチャ
Artec社のアンバサダーであるShonan 3D社から「Artec Leo」の紹介を受けて間もなく、シンガポール国立大学のチャンドリカ・ムトゥクリシュナン博士とアーサー・ラウ・チン・ヘン博士は、自分たちが最良の選択をしたことを確信しました。初期段階で制作した頭蓋骨モデルのスキャンデータには、頸筋の繊細な構造から脳組織の細部に至るまで、あらゆる情報が精緻に網羅されていたからです。

骨の標本をArtec LeoでキャプチャするNUS大学職員
以前、共同研究で活用していたArtec Space Spiderと比較しても、Leoの機動性の高さは際立っていました。ディスプレイ、バッテリー、プロセッサをすべて内蔵した完全ワイヤレス設計により、スキャン中にノートPCを持ち運ぶ必要がありません。また、スキャナの画面上でリアルタイムにフィードバックを確認できるため、操作は極めて直感的であり、細かなディテールも漏らさず確実にキャプチャすることが可能です。
もちろん、Space Spiderはさらに高い解像度を誇り、今回のプロジェクトでも十分に活用できる性能を持っていますが、本事例においてはLeoの「多用途性(汎用性)」が不可欠でした。標本をあらゆる角度から撮影する際、ケーブルが作業の妨げになるのを防ぐため、同大学の講師たちはSpiderをフックで吊るして使用することもありましたが、Leoならその手間も不要です。精度を妥協することなく、極めて優れた成果を上げています。
ムトゥクリシュナン博士は次のように語ります。 「骨盤の3Dモデルを制作した際、当校の医長はそのリアルさと、学生への詳細な解説における活用のしやすさに大変感銘を受けていました。大腿部や外性器の前部を含めた骨盤周りの構造がすべて可視化されており、産婦人科において重要となる骨盤領域、膀胱、直腸も正確に捉えられています」
Artec Studioの活用
スキャニングの経験が浅かったシンガポール国立大学のチームにとって、Artec Studioの高度な機能を使いこなすには多少の時間が必要でした。しかし、Shonan 3D社による的確なサポートを受けることで、最終的な仕上げに不可欠なツールセットを自在に操れるようになりました。
特にメッシュ編集機能は、モデルを完成させる上で大きな役割を果たしています。ノイズの低減や外れ値の除去、そして複雑な形状の「穴埋め」を丁寧に行うことで、完璧かつ美しくテクスチャの施された3Dモデルを制作できるようになりました。また、内蔵の計測ツールを活用することで、各データの比較分析も簡単に行えるようになっています。

解剖学的モデルで人体の研究をする学生
VR(仮想現実)での活用において極めて重要なのが、Artec Studioによる「スキャンデシメーション」機能です。これにより、重要なディテールを損なうことなく、モデル全体のファイルサイズを劇的に軽量化できます。また、クリック一つでOBJやSTL形式へ変換できるため、視覚化や3Dプリントに向けたエクスポート工程も大幅に効率化されました。Shonan 3D社の常務取締役、パトリック・スン氏は、この技術が持つ幅広い可能性について次のように語ります。
「3Dレンダリングされた教材なら、学生は自分のノートPCですぐに内容を確認できます。この教育手法には、計り知れない可能性があります。鮮明な画像、色彩、そしてリアルなテクスチャによって構造が非常に分かりやすく示されるため、実物の標本を観察する以上に、学生の理解を深めることができるのです」
こうした学習素材が整備されたことで、学生は3D空間上で本物の解剖学的データを自在に操り、ノートPCやVR環境を通じて、関心のある部位を詳細に拡大して研究できるようになりました。シンガポール国立大学において、この革新的な手法は医学にとどまらず、薬学、生命科学、歯学といったあらゆる専門分野へと広がっています。
微調整と3Dプリンティングへの可能性
シンガポール国立大学大学職員は、3Dスキャニング技術の向上に引き続き努めています。例えば、液体の中に保存された『湿った』人体部分は吊るすことができないことがありますが、このような場合はArtec Studioの高性能の位置合わせツールが役立ちます。また、デジタル化のために準備されているもっと難しいサンプルも多数あります。

Artec Leo 用いて骨盤モデルを再現
将来的には、この3Dモデリングの取り組みをさらに拡大し、頭頸部の解剖学的特徴をはじめとする複雑な構造を網羅していく計画です。これにより、医学生たちが人体の相関関係や発達上の意義をより深く理解できる環境を整えます。また、評価、教育、そして3Dプリントに活用できる「デジタルツイン」の資産もさらに拡充される予定です。ラウ・チン・ヘン博士は、今後の教育においてVRが極めて重要なツールになると確信しています。
「すでに数種類のVRヘッドセットを導入しており、私自身もApple Vision Proを所有しています」と博士は語ります。「実は、スマートフォンと連携して3Dスキャンデータを読み込めるソフトウェアがあるのです。これにより、モデルを3Dプリントするだけでなく、VR教育にも即座に活用できます。さらに、ノートPCへスクリーンキャスト(画面共有)することも可能なため、大講義室での授業などでも非常に便利です」
医学教育は今、明らかに飛躍的な進歩を遂げています。先進技術はもはや特別なものではなく、日常的な教育の枠組み(フレームワーク)の一部となりつつあります。学習体験はより深く、インタラクティブなものへと進化し、知識の理解度や定着率を劇的に高めています。あらゆる分野がそうであるように、教育の未来もデジタルの中にあります。そしてシンガポール国立大学では、その「未来」がすでに現実のものとなっているのです。

