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コラム 2025.07.04 更新

Freeformで2000年前の顔を再現

およそ2000年前、ローマ支配下のブリテン島で一人の男性が十字架刑に処されました。彼の遺骨は2017年にイングランドのケンブリッジシャーで発見されました。そして現在、法医学イメージングの専門家であるJoe Mullins氏とFreeformソフトウェアの高度な技術により、その男性の顔を再現することが可能となっています。

Mullins氏はアメリカ・バージニア州のジョージメイソン大学の教授であり、またNational Center for Missing and Exploited Children(全国失踪児童・搾取防止センター)の法医学イメージング部門にも所属しています。BBCのドキュメンタリー制作チームは、この歴史的な事件に関して法医学の専門知識を求め、Joe氏に協力を依頼しました。

「これまで関わってきた中で、間違いなく最も興味深く、印象的な案件のひとつです」とMullins氏は語っています。

事件の詳細は衝撃的です。遺骨はローマ時代の集落内にある墓地で発見されました。特徴的だったのはかかとに釘が貫通していたことと、脚が縛られ鎖でつながれていたことです。放射性炭素年代測定によれば、彼は西暦130年から360年の間に亡くなっており、年齢は30代半ばと推定されています。DNA検査の結果、茶色の髪と茶色の目を持っていた可能性が示されました。

「かかとを貫く釘の鮮明な写真と、毛布の上に広げられた遺骨の全体像が非常に印象的でした」とMullins氏は語ります。「すぐに協力を快諾し、顔の復元作業を進めるために、頭蓋骨の写真を提供してもらえるかすぐに尋ねました」

最初の課題は頭蓋骨が一体ではなく12の破片に分かれていたことでした。Mullins氏は最初に破片のスキャンデータを受け取ると、頭蓋骨を再構築して再度スキャンできるかを尋ねましたが、残念ながら不可能でした。そこでMullins氏はFreeformに頼ることにしました。

「Freeformは私の仕事において欠かせない存在です」とMullins氏は語ります。「ドキュメンタリー制作チームから送られてきたのは、頭蓋骨のジグソーパズルのようなファイルでした。Freeformを使うことで破片を一つ一つデジタルに組み立てることができました。頭蓋骨が再構築できたことで、鼻や耳の位置を予測するための3Dスケッチも作成できました。骨格自体にグリッドを配置できるのも大きな利点です」

顔の復元は芸術と科学が等しく融合する独特の分野です。
「私は基本的に内側から外側へとその人の肖像を創り出しているのです」とMullins氏は語ります。「頭蓋骨が顔の特徴を決定します。鼻の形や高さ、唇の厚さ、さらにはまぶた、眉毛、耳、髪の生え際に至るまでです。Freeformを使い一つひとつのパーツに取り組みながら、徐々にその顔を浮かび上がらせていきます」

デジタル環境で作業する大きな利点のひとつは、顔が形作られた後でも常にその下にある頭蓋骨の状態を確認できることです。
「粘土で作業していると、覆い隠してしまった部分は見えなくなります」とMullins氏は語ります。「粘土を盛った後は頭蓋骨の写真を参考にしなければなりません。しかしFreeformなら透明化ボタンをクリックして顔と骨格の表示を切り替えながら、すべてが正しい位置にあるかを簡単に確認できます」

破片の繋ぎ合わせ

わずか10年前までは、Mullins氏の顔の復元作業は粘土を用いるのが一般的でした。頭蓋骨やその一部の写真からAdobe Photoshopで写真合成を行い、それをもとに復元を進めていました。その後3Dによる近似表現へと移行しましたが、いずれの場合もMullins氏は粘土を使い、合成された頭蓋骨のレプリカ上に顔を彫塑していました。

Mullins氏の指導教官の一人であり、当時リバプール・ジョン・ムーアーズ大学芸術デザイン学部に所属していた法医学顔面復元の専門家、Caroline Wilkinson博士が、Mullins氏にFreeformの存在を教えました。

「Freeformを使えば、粘土を使わずに顔の近似復元をデジタルで行えることに気づきました」とMullins氏は語ります。「頭蓋骨のCTスキャン画像をFreeformに取り込み、デジタル環境で自在に操作できます。作業時間は半分以下、場合によってはそれ以上に短縮されます。またバーチャル粘土を透明化できるため、復元する表面を常に確認でき細部を見落とすことがありません。本当に驚くべきことです」

Mullins氏はこれまで愛用していた粘土彫刻用の道具に代わる方法を見つける必要がありました。現在は、Freeformと連動する独自のハプティックインターフェースを使用しています。
「ハプティックデバイスはこのソリューションの非常にありがたい特徴です」とMullins氏は語ります。「まるで粘土を彫っているかのような触感が得られます」

しかしその作業を始める前に、Mullins氏はまず頭蓋骨の破片をデジタル上で組み立て直さなければなりません。通常はOBJやSTLといったファイル形式で行われます。たとえばSTLファイルはCTスキャンのDICOMファイルから変換されます。Freeformに取り込んだ後、Mullins氏は破片をつなぎ合わせる作業を開始します。

「このプロジェクトでは破片を一つずつレイヤーに分け、まず一つのパーツを立体化し、次にまた一つ、さらに次へと進めていきました。ハプティックデバイスで触感を感じながら作業できるのは本当に魅力的でした。2000年前の頭蓋骨がまるで息を吹き返すようで、Freeformなしでは到底できなかったでしょう」

Mullins氏は法医学的な顔面復元の専門家である一方で、骨学者や人類学的な解剖学の専門家ではありません。そのため頭蓋骨の各破片を参考写真と比較し、最も適した位置を見極める作業も経験の一部となっています。

「各破片を動かしながら、それが頬骨弓なのか、下顎骨の一部なのか、頭蓋骨の上部なのかを見極めていきます」とMullins氏は語ります。「実物の世界でこれをやるのは想像もつきません。Freeformなら頭蓋骨に損傷があっても、既存のスキャンデータをコピーしたり反転させたりして欠損部分を補うことができます。現実世界ではできないことです」

Freeformの多彩な機能を活用

FreeformのエキスパートであるMullins氏には多くのお気に入りの機能があります。「Freeformは多機能です」と彼は語ります。「使いたいツールは何でも揃っており、サイズのカスタマイズも自由にできて、必要な作業がすべて行えます」

Mullins氏の作業で非常に役立っているもう一つの機能は、耳や目のように対をなす特徴を複製して移動させることができる機能です。

「粘土で耳を彫る場合、左右一対を作ってからそれぞれを粘土に取り付ける作業が必要でした」とMullins氏は語ります。「Freeformならその作業が10倍速くなります。片側を作ったら反転させるだけで、左右両方が完成します。これは目を眼窩に配置する際にも非常に役立ちます。以前は片方の眼窩にビー玉を入れて両目の向きを調整していましたが、今は視点を変えながらそれぞれの目をはるかに正確に配置できます。まさに雲泥の差です」

これらの機能により、およそ2000年前の特徴的で印象深い顔—あごひげと濃い茶色の瞳を持つ—を蘇らせることができました。

「その顔を見つめた瞬間のことは決して忘れません」とMullins氏は語ります。「Freeformなしでは実現できなかったことです。私のキャリアを通じて、素晴らしいツールであり続けています」



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