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医療

Formlabs 3Dプリンタが複雑な脳動脈瘤手術にどのように役立つか

ハセッテペ大学脳神経外科

2023.02.06 更新

Artec Leo

開頭手術の練習に使用する、脳と動脈が露出した3Dプリント頭蓋骨

 

近年、血管内技術の進歩により、脳動脈瘤に対する手術の必要性が低下しています。現在では、複雑度の低い脳動脈瘤の大半に低侵襲の血管内手術が行われています。より複雑で重度の症例で頭蓋内手術が絶対に必要な場合、リスクを低減し治療結果を改善するための術中ガイダンスおよび計画ツールとして、3Dプリンティングが採用されています。この分野の第一人者であるハセッテペ大学脳神経外科のSahin Hanalioglu博士は、3Dプリントモデルを使用して手術結果を改善したパイオニアです。

問題:

下の症例では、大きめの脳動脈瘤がある患者さんです。動脈瘤は血管奇形(血管壁の弱さによる血管のふくらみ)の一つで、脳血管の動脈瘤が破裂すると、脳出血を起こすことがあります。さらに、動脈瘤が血栓症(血の塊が静脈や動脈を塞ぐこと)になると、塞栓症の原因になることもあります。

解決策:

この動脈瘤を正常な脳循環から除外する。通常、動脈瘤は脳の奥深くに埋まっており、そこに到達するためには、脳の裂け目や自然の通路を円周方向に丁寧に剥離するマイクロサージェリー技術が必要です。最終的には、動脈瘤を外科用クリップで循環から除外し、傷口を閉じます。この手術をクリッピングといいます。

従来の方法と3Dプリンティングの比較:

従来、脳外科医はCTやMRIの画像と自身の解剖学的知識を用いて、頭の中で病変の立体的な関係を想像していました。しかし、3Dプリント技術や3Dシミュレーションにより、画面上(3DVRヘッドセット)と3Dプリントした模型の両方で、具体的な解剖学的構造を容易に確認することができるようになりました。

近年、3D ビジュアルシミュレーション技術は信じられないほどの進歩を遂げていますが、多くの外科医にとって、患者専用にカスタマイズされたモデルを物理的に触れ、練習することは、手術結果にさらに大きなプラスの影響を与えます。Btech社の3D多層モデル、セグメントモデル、完全統合モデルは、外科医が頭蓋骨に穴を開け、下の組織を傷つけずに「手術用窓」を作るために、一部を取り除かなければならない開頭手術に役立つことがあります。

このユニークなモデルは、外科医が視覚化できるだけでなく、手術のシミュレーションを行うのにも役立ちます。外科医は、手術のリハーサルを行い、手術前に病理を取り除くために異なるアプローチを見つける機会を得る事ができ、特定の手術手技の利点と欠点を理解し、また障害のなる部分を理解することができます。

Formlabsプリンタ専用ソフトウェア「PreForm」を使って、パーツの位置決めと造形を行いました。

重要なのは、3Dプリントされたモデルを使用することで、複雑な手術の前に自信を深めることができることです。「手術中に驚くようなことはありませんし、手術前にすべてをリハーサルすることができます。これは、私自身の診療にも、私が話をする多くの外科医にも役立っています。」とHanalioglu氏は述べています。

3Dプリントのその他の利点:3Dプリントされたモデルは、患者だけでなく、大学院生や研究室の学生を教育するためにも重要です。MRI血管造影や3次元体積断層撮影MR静脈造影などのさまざまな放射線学的モダリティがあり、完全に洗練されたモデルを作成することができます。しかし、それぞれのモダリティは、間脳構造や脳室構造など、1つか2つの特定の脳内部構造組織を可視化することができます。しかし、腫瘍などの病変があると、脳の構造は解剖学的に変化したり、ずれたりします。そのため、病変の種類に応じて、正常な組織の新しい形状を再ビジュアライズし、再構築する必要があるのです。3Dプリンタで造形するモデルは、患者の疾患や病理に応じてカスタマイズされた、完全にパーソナライズされたモデルです。」とHanalioglu氏は述べています。

Hanalioglu氏は、「複雑な手術では、外科医長だけが患者のどこに問題があるのかを完全に把握できることがあります。」と語っています。「今は、3Dプリントされたモデルがあるので、研修医も含めて全員が知識を持って手術に臨むことができます。術中指導がしやすくなります。」

さらに、「この3Dプリントモデルは、研修医や学生、その他の同僚と一緒に手術のリハーサルをするのに役立ちます。」と続けました。「3Dプリントモデルがあれば、医学生や研修医、若い脳神経外科医を訓練して手術について議論するのに役立ちます。」とHanalioglu氏は述べました。

右の写真では、異なるモダリティが、この3次元の病理という1つの現実のさまざまな部分を示しています。しかし、3Dプリントされたモデルがあれば、これらの異なる情報が1つにまとまります。左側は、手術中の様子です。

3Dモデルの作り方:

Btech社では、モデルのセグメンテーションにMaterialiseソフトウェア(Mimics)を使用しました。生物医学エンジニアは、このソフトウェアを使って、異なるモダリティで撮影された各DICOMファイルをインポートします。セグメンテーション、モデリング、シミュレーションのプロセスはソフトウェアの機能によって行われ、最終的なファイルは.stlまたは.objのフォーマットでエクスポートされます。外科医もこのプロセスに参加することで、病態を明確にし、造形する最終的なデジタルファイルを微調整することができます。例えば、外科医は2つの血管の干渉を特定し、その専門知識を活かして各モデルをダブルチェックすることができます。画像処理技術の解像度は高いのですが、このような複雑なシステムには、セカンドオピニオンが非常に重要です。

患者の視点:疑わしい発作を呈する55歳の患者を分析し、まずCTとMRIスキャンによる脳画像で評価しました。脳画像では,前頭葉と側頭葉の間の左シルビウス裂に1.5cmの腫瘤が認められました。最初に想定されたのは、巨大な腫瘍か動脈瘤の可能性でした。さらに画像診断を行った結果、本症例は血栓性巨大動脈瘤(2cm以上)であることが確認されました。動脈瘤の中に血栓が見つかると、小さくて太い血栓(血の塊)が遠位の動脈まで迷い込み、動脈を閉塞してしまうことがあります。それらの閉塞は、脳の重要な部分への血流を止め、患者に脳卒中を引き起こします。

外科的治療が選択肢として提示された時点で、医療チームはCT、MR、MRアンギオ、3D回転デジタルサブトラクションアンギオなどの高度な画像診断のデジタルモデルを使用し、患者と手術計画について話し合っていました。今回のように緊急に手術が必要な急性期には、3Dモデルを使うことで、術者がイメージしやすくなり、練習にもなりますし、患者も納得して手術に臨むことができるのです。

デジタルシミュレーションでもわかるように、デジタルモデルの色や角度、位置を変えて、最終的な手術の様子をシミュレーションすることが可能です。この画像は、センタープリズムとその下にある血管の複雑な関係を示しています。このモデルにより、外科医は手術前に脳下の主枝とクリッピングのシミュレーションの関係を確認できるため、手術の準備の際に視覚的な情報を容易に得ることができ、より効率的な手術につなげることができるのです。

課題と留意点:

3Dプリントのデメリットは、パーツの作成にかかる時間です。Hanalioglu氏は、モデルを準備し、プリントするために、1日か2日以上必要だと話してくれました。そのため、急を要する案件では、3Dモデルを作成できないこともあります。

外科医は、高解像度スキャナーや高品質の3Dプリンタなど、適切な機器を備えていることも確認する必要があります。

Hanalioglu氏によると、3Dプリンタを検討する際、最も重視する特徴は以下の通りだそうです。

1.硬い素材と軟らかい素材の両方をプリントできること。これは、彼のモデルには頭蓋骨と動脈の両方が含まれているからです。

2.パーツの解像度の高さ。手術のシミュレーションをできるだけ忠実に行うために重要です。

3.部品1個あたりのコストの妥当性。

3Dプリンティング、ドナー、そして手術計画。ほとんどの臨床医は、3Dプリントモデルを亡くなったドナーの代わりではなく、補完的なツールとして受け入れています。 しかし、純粋に亡くなったドナーベースの研究実践には限界があり、研究機関は低コストで知識のギャップを埋めるために、ますます3Dプリントモデルを使用するようになってきています。

研修医グループが大勢の学生で混み合っている場合、教授が学生一人ひとりに亡くなったドナーで指導することはできません。「そこで、基本的な指導はドナーで行い、より詳細なプロセスリハーサルを3Dプリントした模型で行うようにしました。もちろん、医学生のレベルに応じて、3Dプリントした模型の細部を調整することも可能です。 たとえば、モデルのさまざまな部分に色を付けると、新入生には便利です。」とHanalioglu氏は言います。

したがって、医学教育において最大の価値を提供するためには、3Dプリントモデルと亡くなったドナーの両方を協調して使用する必要があります。

3Dプリントモデルの良いところは、脳が透明で、側頭葉や前頭葉の下にある動脈瘤や血管を簡単に見ることができることです。3Dデジタルモデルと比較して、物理的な3Dプリントモデルの重要性は、外科医が手術に対応するのに十分な経験を持っていない場合にはっきりと見ることができます。3Dプリントモデルは、経験の浅い外科医が動脈瘤の位置と開頭術を標準化するのに役立ちます。

3Dデジタルモデルでは、位置を変えるように仮想的に調整し、セグメント化することができますが、触覚に対するフィードバックが不足します。3Dプリントモデルでは、外科医が自分で位置を変えることで、脳をさまざまな角度から見ることができます。しかし、一度モデルが破損したり、切断されたりすると元に戻すことはできません。

3Dプリントモデルに使用された材料:

この3Dプリントモデルでは、脳血管、組織、頭蓋骨の解剖学的構造をイメージングで取得し、骨モデルのプリントにはDurable Resinを、脳組織と血管のプリントにはElastic 50A Resinを使用しています。モデルはForm 3でプリントされましたが、最近Form 3B+に変更されました。

Hanalioglu氏はElastic 50Aのエラストマー特性を利用しています。動脈組織を模倣できるため、正確な練習に役立ちます。 彼によると、「近年、素材に改良が加えられています。より動脈に近い感触が得られるようになりました。まだ改良の余地はありますが、より良い感触です。」と述べました。

最後に、Hanalioglu氏は、「プリントした動脈モデルに塗装を施し、様々な部分の識別を補助しています。Elastic 50A Resinのような柔らかい素材に塗装できることも、この素材の利点のひとつです。」と述べました。

 



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