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3Dプリンタで次世代型酸素濃度計を開発

OxiWear 社

2022.10.12 更新

Artec Leo

アイゼンメンジャー症候群(心臓と肺の血流が不規則)のため重度の肺高血圧症(PH)と診断されたシャビニ・フェルナンド氏は、自身の酸素レベルを監視する方法を見つける必要がありました。その解決策に取り組む一方で、酸素濃度の急激な低下により心停止し、自己心肺蘇生が必要になるなど、彼女自身も何度も緊急事態を経験しました。

フェルナンド氏は、耳の上に装着しながらバイタルサインを監視し、緊急警報を発する事のできるアクセサリーOxiWearを発明しました。他の酸素飽和度(SpO2)モニターは、ユーザーが静止しているときに1回の読み取りを行うのに対し、OxiWearは1日中常時モニタリングを行うことができるのデバイスです。フェルナンドの発明は、酸素濃度の低下が懸念される30以上の疾患を監視し、患者の生活に平穏をもたらす可能性を持っています。

この記事では、会社の創設者であるシャビニ・フェルナンド氏に、この革新的な新しいデバイスをどのように作ったか、複数の3Dプリント材料を使用する理由、そしてOxiWearの次の展開について話を伺います。

連続的な酸素の追跡


OxiWearトラッカーは、過酷な環境にも耐えられるように開発されました

OxiWearは、酸素飽和度とバイタルサインを連続的にモニタリングできる、この種のものとしては初めての、耳に装着するタイプの酸素トラッカーです。ユーザーの耳の上にぴったりとフィットするこのデバイスは、邪魔になったり不快になったりすることなく、バイタルサインをトラッキングできます。小型・軽量・耐水性、そしてカスタマイズ可能なデザイン性を備え、フェルナンドは「より小さく、よりスタイリッシュなデバイスを目指しています。医療機器としてではなく、自分が身につけたいと思えるようなものを目指しています」。と言います。

このOxiWearは、非常にパワフルなデバイスです。モバイルアプリと連動し、リアルタイムでモニタリングができるため、ユーザーは自分の健康状態を把握し、バイタルサインが特定の閾値を下回るとアラートを設定することができます。フェルナンド氏は、「新型コロナウイルスが流行する前は、酸素の継続的なモニタリングが必要だと説得するのに苦労しました。」と語っています。しかし、数年後、公衆衛生と呼吸器症状を最優先に考えた結果、今ではその用途は一目瞭然となっています。

OxiWearは市場に出たばかりにもかかわらず、すでに一流で競争力の高いパートナーからの支持を獲得しています。世界最高峰の障害物コースレース(OCR)やエベレストで行われるAltitude OCRに参加するアスリートは、安全のために酸素レベルを監視する必要がありますが、同時に参加者にとってデバイスが邪魔になることは許されません。同社がOxiWear社との提携を決めたのは、高地肺水腫(HAPE)、高地脳浮腫(HACE)、高山病など、すべて体組織の低酸素症(酸素飽和度の低さ)によって引き起こされる生命にかかわる病状を検知・予防したいとの考えからです。

-デイブ・ピクルス氏(World’s Highest OCR & Altitude OCR 共同設立者)
「私たちは、この新しいパートナーシップを大変うれしく思っています。私たちは、OxiWear製品のテストを開始することを熱望しており、強力かつ効果的で品質が保証された方法で貢献できると信じています。移植可能な技術は我々にとって明確であり、我々が活動する遠隔地や過酷な環境でのデータ収集に役立つことでしょう。」

部品の試作とESDレジン製治具の作成


複数のプロトタイプを1つのビルドプラットフォームでプリントしています

多くのハードウェアスタートアップ企業と同様に、フェルナンド氏がOxiWearを開発しようとしたとき、試作と製造コストが大きな障壁となりました。チームは結局、1台のForm 3Bを使ってデバイスの試作品を作成するだけでなく、Formlabs ESDレジンで造形した静電気放電用の治具を作成することにしました。

「3Dプリントを社内で行うことで、開発ライフサイクルのコストを大幅に削減でき、複数のプロトタイプ設計を同時にテストすることが可能になりました。3Dプリントする前は、試作品を外注するたびに約200ドルかかっていました。Form 3Bで造形した場合は、小銭で済みます。」とフェルナンド氏は語っています。

Formlabsのプリンタは汎用性があり、1台のプリンタで20以上の材料でプリントできるため、ユーザーは用途に応じた最適な材料を手に入れることができます。OxiWearは、デバイスの試作と製造に3つの異なる素材を使用しました。

Elastic 50Aレジン:
Formlabsが提供するエンジニアリングレジンの中で最も柔らかいこの50Aショアデュロメーター材料は、通常シリコンで製造される部品のプロトタイピングに適しています。曲げ、伸ばし、圧縮し、破れることなく繰り返しのサイクルに耐え、すぐに元の形に戻るような部品にはElastic 50Aレジンをお選びください。このため、OxiWearはソフト耳型の試作にElastic 50Aレジンを採用し、ユーザーの耳にフィットする形状を確認しました。

GreyProレジン:
高い精度と適度な伸び、そして経時変化による変形に強いことから、さまざまなエンジニアリング用途に適した汎用性の高い材料です。ダークグレーの色身は外観確認用プロトタイプに最適です。OxiWearは、GreyProレジンを使用して、OxiWearデバイスのハードキャリーケースを試作しました。

ESDレジン:
ESDレジンを使用して、電子機器製造ワークフローの試作と検証、埃や粉をはじく静電散逸性部品の造形、敏感な電子機器を静電気から保護する筐体を作成します。OxiWearは、ESDレジンを使用してカスタム製造治具を作成しました。

充電ケースの試作は、充電ポートの位置やイヤーピースのフィット感を確認するために重要でした。イヤーピースを変更すると、充電ケースも調整が必要になりますが、これは新しいケースを3Dプリントするのと同じくらい簡単でした。充電ケースを作る間、フェルナンドは、試作品と部品を大量にプリントしたため、「私の家は小さな工場のようだった」と冗談を言いました。チームがケースに満足すると、射出成形で大量生産するためにファイルを送りました。

ところが、製造過程で、内部の回路基板がショートしてしまうという新たな問題が発生しました。フェルナンド氏はESDレジンに目をつけ、韓国の製造パートナー向けに一連のカスタム治具を作成しました。この新しい治具は、ESDレジンの重要な特性である静電気の放散を可能にし、回路基板へのダメージを防ぐことができました。

OxiWearのCTOである電気技師ジョージ・ベックステイン氏は、OxiWearの大量生産への移行を監督しています。製造時の歩留まり低下を抑えるために、彼はカスタムフィット治具のESDレジンに目をつけました。「当社の部品はサイズが小さいため、製造が困難な場合があります。また、静電気による衝撃でマザーボードを失うと、30ドルから40ドルの材料が無駄になってしまいます。このような材料を提供している造形サービスは見つかりませんでしたが、Formlabsが提供しているのは完璧でした。」とベックステインは話してくれました。

酸素モニターを耳元で

OxiWearは、今年から米国でアスレチック・トラッキング用として展開しており、将来的には医療用としてFDAの認可を取得する予定です。フェルナンド氏は、「すべての人がOxiWearを身につけること」を会社の最終目標として掲げています。介護施設やアスリート、そしていつの日か乳幼児まで、多くの人にサービスを提供できる可能性を秘めたデバイスです。



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