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CASESTUDY 導入事例

Autodesk Fusion 360が実現した重量物移動の歴史的革命

株式会社 北日本重量

2021.06.17 更新

Artec Leo

重量物移動装置の設計開発と移動作業の確認にFusion 360 を活用。常に危険のともなう重量物移動業務の安全性と効率性を大きく向上。

Fusion 360 の導入によって さまざまな課題が解決

株式会社北日本重量は、北海道旭川市に本社を置く、発変電所重量工事や重量物運搬を専門とする会社である。同社の社訓は「楽に楽しくかっこよく」という、これまでの建設業の常識である「きつい汚い危険」という「3K」に、真っ向から立ち向かうものだ。同社は、この不可能とも思えるチャレンジを、Fusion 360 を業界に先駆けて導入することによって実現。業界に歴史的革命をもたらした。重量物運搬は、数千年前からコロ曳きと呼ばれる工法が主流であった。コロ曳きは、コロを並べてその上に重量物を置き、重量物を押して移動させるという工法であり、非常に重労働で、多くの危険が潜んでいるものであった。

そこで新たな重量物移動工法として、代表取締役の影本氏が考案したのが移動装置を使う方法である。これまでに同社は、「ジョイントプレート型移動装置 Zero1」、「積載型移動装置 Zero2」、「アタッチメント式移動装置 Zero3」の 3 種類の移動装置を開発している。

「弊社は、重い物では 200 トンや 250 トンといったものも扱いますが、これまではその移動工法が、昔から使われているコロ曳きという工法しかなかったんです。もう完全に諦められているような状態で、それをなんとか変えていこうということで、移動装置の開発に取り組みました」(影本氏)

影本氏は、以前から Autodesk の 2D CAD「AutoCAD LT」を使って設計を行っており、Autodesk には絶大な信頼を持っていた。重量物運搬業界は、他のメーカーなどに比べて、3D の導入が遅れており、影本氏は、一刻も早く 3D を導入する必要があると感じていたそうだ。

「3D CAD でも、メインになるのは Autodesk さんのソフトだろうと思って、2 年くらい前に Fusion 360 を使い始めました。最初は無料で使えるということだったので、まずは使ってみようと」(影本氏)
影本氏が 3D CAD を触るのは Fusion 360 が始めてだったが、独学で操作を習得し、3D アニメーションを作成した。その 3D アニメーションの効果は絶大だった。

「移動装置の動作の様子を Fusion 360 で 3D アニメーションにして見せたんですが、みんな一目見てすごいと。これならやりたいと。求人募集をしてもなかなか人が集まらないのですが、3D を見せたことで、ただの作業会社じゃなくて、こういうこともやれる会社なんだと分かってもらえて、人が来るようになりました」(影本氏)

Fusion 360 は、クライアントに提出する施行計画図の作成にも役立っている。Fusion 360 導入前は、2D CAD で作成した図面を見せていたが、工法や手順などがクライアントに伝わりづらかったという。しかし、Fusion 360 を利用することで、施工計画図を 3D 化することが可能になり、クライアントに分かりやすく伝えることができるようになった。

「施工計画図を 3D にしたことで、クライアントの受けもとてもよくなりました。説明文がほとんど不要で、ぱっと見ただけでイメージが分かると。移動装置に関しては、ここを通れるのか、通れないかというのを、3D アニメーションにして見せています。それを見せるだけで信用されるので、新規案件の受注にも大きな効果がありました」(影本氏)

もちろん、移動装置の設計や強度計算にも Fusion 360 が使われている。Fusion 360 の導入によって、2D CAD では確認しづらかった干渉を、簡単にチェックできるようになったほか、製作用 2D 図面も 3D 図面から作成できるため、開発効率が格段に向上した。強度計算についても、以前は鋼材別の強度表を使っていたため、正確な計算は不可能であったが、Fusion 360 の解析機能を利用することで、正確な強度計算が可能になり、安全率を考慮した設計を無駄なくできるようになったという。

作業員全員が Fusion 360 をマスター

北日本重量は、社員のほとんどを占める作業員が全員、営業マンでもあり、さらに 3D CAD のオペレーターでもあることもユニークだ。同社が特に注意を払っているのが、作業の安全面である。同社は創業以来無事故を続けているが、それが使命だと影本氏は語る。

「Fusion 360 で 3D 施工計画を作成し、作業員自身がその作業を的確にイメージできれば強力な事故防止対策となります。当社ではこれを命を守る 3D プロジェクトとして社員にノート PC を支給し Fusion 360 で 3D 施工計画を作成、提出することでお客様にも高い評価をいただいております」(影本氏)

3D CAD を使った経験がある作業員はほとんどいないが、影本氏が自ら、作業員に Fusion 360 の基本的な使い方を教え、その後は書籍などで独学で覚えていくという。施工計画図などは、Dropbox を使って作業員全員が共有しており、現場でスマートフォンを使って確認することもある。

さまざまな移動装置を開発してきた影本氏だが、これで満足しているわけではない。影本氏は、完成したらその装置はもう古いと考えているのだ。

「完成して、もう世に出したものは古いと思って、また次のものを考えていかないとダメだと思います。これまではあまりにも手つかずの分野でしたが、今はグローバル化により注目が集まると同時に情報が流れます。スマホを見た世界中の技術者がもっと凄い装置をすぐに生み出します。優秀な彼らから見るとこれは子どもの工作程度でしょうから。3000 年以上続いたコロ曳の歴史は止められるのかもしれませんが破壊的イノベーションが起きる時代に僕の移動装置が 3000 年続くかっていうと、それは絶対ないですからね」(影本氏)

3D の導入に関して日本は遅れていると影本氏は感じており、今後もどんどん 3D 技術を取り入れていくという。最近、3D スキャナーを導入し、現場の状況を 3D スキャンすることで、より精度の高い施工計画を立てることができるようになったそうだ。さらに、今後は、VR を取り入れ、VR 空間の中で危険箇所を可視化し、新規入場者や新入社員研修などに使ってみたいそうだ。3D 化のメリットは大きく、是非導入するべきだと影本氏は語った。

「3D を導入すると、会社の評価は間違いなく変わると思って取り組んできましたが、実際に、評価が大きく変わり、信用も得ました。3D を始めたら、まず 2D に戻ろうと思う人はいません。だから、遅かれ早かれ、すべてが 3D に変わるだろうと思います。新しいものを目指していこうとする弊社が、みんなを引っぱっていけるのも 3D のおかげだと感謝しております」
(影本氏)



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