CASESTUDY 導入事例
Geomagic DesignX工業デザイン&製造Artec Eva
リバースエンジニアリングで電動バイク世界最高速記録!
株式会社モビテック
2021.02.16 更新
自社製品を持たないエンジニアリング企業が、自らの技術を試すため
世界最高峰のモーターサイクル最高速度認定競技会へチャレンジ
「Bonneville Motorcycle Speed Trials」(以下BMST)は、AMA(全米モーターサイクル協会)とFIM(国際モーターサイクリズム連盟)が公認する世界最高峰のモーターサイクル最高速度認定競技会である。毎年8 月、米国ユタ州のボンネビル・ソルトフラッツという塩類平原で開催され、世界から約200 チームが参加。数十のカテゴリに分かれて世界最高速の更新を競い合う。――2019 年8 月29 日、このBMST で日本製電動バイクが329km/h の世界最高速記録を樹立した。驚いたことにそれは有名バイクチームやバイクメーカーのマシンではなく、四輪メーカーのものでさえなかった。日本のエンジニアリング企業 モビテックが開発したマシンだったのである。
EV-01 のクレイモデル
「なぜ世界最高速の電動バイク開発に挑戦したのか?それはエンジニアリング企業として、自らの実力を試したかったからです。技術力を目に見える形で世界に示したかったんですよ」。同プロジェクトチームを率いる技術企画部の小森英祐氏はそう語る。設計支援や3Dモデリング、解析等々を通じて、同社は長く自動車業界の製品開発を支援してきた。しかし、自社製品を持たないため、その技術力をはっきり示すことが難しかったのだ。「自分たちの技術がどれほどのレベルか知りたい」「 それを形にして世界に示したい」。そんな技術者たちの声が徐々に高まり、2011年に社内プロジェクトとして動き始めたのが、この電動バイクプロジェクトだった。
Design Xで作成した 3DCADデータ
「チャレンジ内容は社内でもさまざまなアイデアが出ましたが、将来の普及を見込んで電動モビリティの分野で、しかもコストを抑えられる二輪で世界最高速を目指そうという結論になりました」。同時にプロジェクトには、電動バイク開発という、同社にとって未知の製品開発を通じ新技術を習得する狙いもあった。事実、世界最高速の目標を達成した2019 年まで8 年にも及ぶ挑戦を通じ、同社は多様な新技術に挑み、学んで、多くを実務へ転用していった。中にはプロジェクトで多くの研鑽を重ね、実務でも大きな成果を挙げているものもある。3D スキャナーと3D Systems の Geomagic ソフトウェアによるリバースエンジニアリングが、その代表的な一つだ。
株式会社モビテック 技術企画部 技術企画グループの小森英祐氏(左)と南和宏氏(右)
プロジェクトではまず、ある市販バイクをベースに試験機を製作し試乗会を実施。そこで得られた知見を基に2013年暮から初号機EV-01の開発が始まった。やがて主要部品の仕様検討や選定が本格化し、その搭載設計・フレーム詳細設計も始まる。「モーターやバッテリーは既存品を使うので、課題はそれらを収める車両作りでした。コンポーネント配置や収納は自動車部品等の設計ノウハウがあり、そこから応用できましたが、問題は外装です。バイクの見た目や空力問題に関して、当社には知見が全くなかったのです」。結局、外部の専門家から車両の作り方を教わることになったが、結果として必要になったのがリバースエンジニアリングの技術だった。