2Dから3Dへ:失敗しないための7つのポイントとは? ~SpinFire Insightによる3Dコミュニケーション~
ライター:TechSoft 3D | Koji Takaba
【はじめに】
数十年にわたり3D可視化とCADデータ変換のツールキットを提供してきた私たちは、数多くのイノベーションの成功と、そして時に完全な失敗を目の当たりにしてきました。
現在、設計プロセスのあらゆる段階で3Dデータの価値が高まっており、工数の多い2D図面を完全に排除しようとする動きが加速しています。その一方で、2Dデータが持つ「共有のしやすさ」や「確実性」を重視し続ける声も根強く残っています。
この両者の溝を埋め、社内外のコミュニケーションを円滑にする鍵となるのが「3D PDF」です。
本稿では、市場で培った私たちの経験に基づき、エンジニアリングワークフローを2Dから3Dへ移行する際に「避けるべき7つの間違い」をまとめました。これらの事例を通じて、3D PDFの具体的な機能や最適な活用シーン、そしてその限界を明らかにしていきます。
以下の7項目をクリックすると、3DPDFに移行時に陥りがちな間違いの詳細と、それを回避するための3D PDF活用法を詳しくご確認いただけます。
# Mistake1:高価な専用ビューアの導入をユーザーに求めてしまうこと
3Dデータ中心の運用へ移行する際、組織は「CADを持たない社内外の関係者が、いかにデータを閲覧するか」という大きな課題に直面します。3Dデータは直感的で没入感のある情報提供を可能にしますが、その閲覧環境には2Dにはなかった「コスト」という壁が立ちはだかることが少なくありません。
本来、2D図面は紙でもPDFでも、設計意図を「迅速・直感的・低コスト」に伝えることができる非常に優れた共有手段です。対して、一般的な3Dビューアは導入コストが高く、ベンダーはその価格を正当化するために測定や注釈といった多機能性を謳います。しかし、多くの現場で求められているのは「単に3Dで見たい」というシンプルなニーズであり、過剰な機能とコストは普及の妨げになります。
その結果、「無料の2D図面」か「高価なツールが必要な3D」か、という二者択一を顧客やパートナーに迫る状況が生まれます。これでは、3DPDFのメリットを諦めるか、あるいは閲覧のためだけに高額費用を負担するかのどちらかになってしまいます。
この「情報の豊かさ」と「共有のしやすさ」のジレンマを解消するのが3D PDFです。 3D PDFの最大の利点は、閲覧側が無償のAdobe Acrobat Readerでそのまま動的な3D情報を確認できる点にあります。送り手が作成環境を整えるだけで、受け手には一切の追加費用を強いることなく、3Dデータの持つ価値を届けることが可能です。
Tech Soft 3Dは、2010年にAdobeから3D技術を正式に継承して以来、SpinFireやHOOPSといったソリューションを通じて、この「誰もが3Dにアクセスできる環境」を実現し続けています。
# Mistake2:PMI(製品製造情報)の重要性を考慮していないこと
エンジニアリングや製造の現場において、「形状データだけでは部品は作れない」というのは共通認識です。設計者は、寸法や公差といった不可欠な情報を、製造担当者へ正確に伝えなければなりません。ここで極めて重要になるのがPMI(Product Manufacturing Information:製品製造情報)です。
2D図面ではこの伝達が当たり前に行われてきましたが、3Dデータを異なるアプリケーション間でやり取り(中間フォーマットへの変換)する際、このPMIが抜け落ちてしまうというトラブルが頻発しています。一部のツールでは「ビューア上で後から寸法を書き込む」という回避策もありますが、厳格な製造プロセスにおいてPMIには以下の代えがたい役割があります。
- 設計意図の完結: 3D形状データだけでは表現しきれない「公差」や「注記」の保持。
- 品質の証明: 製造が正しく行われたことを示す「文書としての証拠能力」。
- 検証の基準: 例えば「穴の間隔が40mm ±0.1mm」という指定がある場合、品質保証部門はその数値と公差を基に検査し、記録を残す必要があります。
3D PDFは、このPMIの完全性を3Dモデルとセットで維持できる、MBD(モデルベース定義)対応の最適なソリューションです。
Tech Soft 3D社の「HOOPS」製品は、CATIA、NX、Creoといった主要なネイティブCADからPMIを正確に読み取り、そのまま3D PDFへと出力します。これにより、現場の担当者は高価なCADソフトを持たずとも、Adobe Acrobat Reader上で設計者が意図した通りの正確な製造情報を確認し、業務に活用することができるのです。
# Mistake3:使いやすさとセキュリティのバランスを取れていないこと
企業が3Dデータを社外と共有したくない理由は数多くあります。代表的なものとして、以下が挙げられます。
- 必要な3Dビューワが社外では一般的に利用されていない
- データの機密性や、データアクセスに関する承認プロセスの問題
- データがコピーされたり、別の目的に利用されたりすることへの懸念
私たちがある製造業を訪問した際、設計エンジニアから「設計データを共有できないことが業務効率の大きな障害になっている」という話を直接聞きました。サプライヤーとやり取りを行うたびに、新たに2Dファイルを作成しなければならず、その都度、2Dによる資料を作成・送付する必要がありました。こうした繰り返しによって、貴重なエンジニアリング工数が失われていたのです。
3D PDFは、機密性の高い可能性のある設計情報を、社外へ安全かつ手軽に共有するための最適なソリューションです。このフォーマットは十分なセキュリティ機能と権限制御を備えており、高いセキュリティ要件を持つ大企業や政府機関にも長年にわたり信頼されてきました。その安心感のもと、組織はデータの完全性を損なう心配なく、設計情報や付加価値の高いデータを効果的に共有できます。さらに、3D PDFはメールに添付するだけで共有可能であり、受信者が3Dビューワを持っていないためにファイルを開けない、といった心配もありません。
# Mistake4:3D PDFのカスタマイズ性を十分に活用できていないこと
組織によって、設計データの活用目的は大きく異なります。例えば、検査部門では、測定結果を分かりやすく示すために、3D CADデータを取り込んだレポートを作成することがあります。一方、購買部門では、必要なものを必要なタイミングで確実に調達するために、使用する材料やその量、数量、必要な工具、仕上げ仕様、納期、配送時間といった各種物流情報を収集します。
2D図面では、紙のドキュメント1枚に必要な情報がすべてまとまっており、数秒で確認できることも少なくありません。3D設計データを使用する場合にも、こうした利便性は同等、もしくはそれ以上であることが求められます。そのため、3Dビューイングソリューションには、カスタマイズ性が高く、直感的で、かつブランドに沿ったデザインが必要です。これにより、ユーザーはできるだけ短時間で、かつ多くの情報を分かりやすく把握できるようになります。
3D PDFは、これらすべてのカスタマイズ要件に対応する最適なソリューションです。3D PDFでは、書式、会社ロゴ、レイアウトなど、チームのニーズに合わせたテンプレートを作成することができます。例えば、Microsoft PowerPointから出力した3D PDFを、今後新たな3D PDFを作成するためのテンプレートとして活用することも可能です。チームは、下流工程や部門ごとの要件に合わせて、数多くの3D PDFテンプレートを用意することができます。これにより、コラボレーションやコミュニケーションのプロセスが効率化され、アイデアの共有が促進されると同時に、単純作業に費やされる時間を最小限に抑えることができます。
# Mistake5:既存の2Dドキュメントワークフローに3Dを組み込んでいないこと
私たちの経験では、ほとんどの製造業では、既存のデジタルデータを共有するためのプロセスが明確に定義されており、何らかの形でPDFがドキュメント共有に利用されています。例えば Autodesk は、AutoCADからPDFを書き出す機能を提供しており、行政機関の担当者から現場管理者に至るまで、意思決定者が理解しやすい形式で設計内容を簡単に確認できるようになっています。
PDFを扱える同じビューワで、3D PDFもそのまま扱うことができます。例えば、施工業者が行政の承認機関に提出するPDFと同様に、請求書として送付するPDFの中に3D表示(3Dビューポート)を含めることも可能であり、これにより伝達される情報の質を大幅に高めることができます。同じことは、取扱説明書やその他の一般的なPDFドキュメントにも当てはまります。つまり、PDFとして閲覧できるものであれば、3D PDFとしてより豊富で価値の高い情報を組み込むことができるということです。
多くの製造業チームは、日常的なコミュニケーションに新たなワークフローやプロセスを追加することを好まず、その結果、3D設計データを正しく活用するには手間がかかるという印象から、3Dデータの導入に対して慎重になりがちです。3D PDFは、最小限の新しいプロセスや組織変更で、3Dの利点を最大限に活用できる手段を提供します。どの組織も「手軽に成果が得られること」を歓迎しますが、3D PDFはまさにそのようなシンプルで効果的な解決策です。
# Mistake6:3D PDFで巨大アセンブリの完全な描画を期待してしまうこと
3D PDFは非常に優れたツールですが、あらゆる用途に対応できる万能な解決策ではありません。多くの3Dビューワベンダーは、販売上の強みとして描画性能を前面に打ち出しており、自動車全体のアセンブリのような巨大な3Dデータファイルを表示できる能力を提供しています。こうした機能が必要な場合には、それに対応できる高性能な3Dビューアを検討すべきでしょう。しかし、私たちの経験では、設計・エンジニアリング・製造業務の大半は、より小規模なデータを扱うケースがほとんどです。
最近、あるTier 1サプライヤーを訪問した際、関連する2D図面をより文脈的に理解するために、高性能な3Dビューワをライセンス導入しているという話を聞きました。しかし、その運用のために必要となるワークステーションやグラフィックスカードのコストが非常に高いことに不満を抱いていました。私たちの見方では、これはまさに、運転手付きのフェラーリを雇って、近くのコンビニまで行くようなものでした。
多くの設計・エンジニアリング・製造のユースケースでは、単一部品や20点未満のサブアセンブリを扱うことが一般的です。確かに、一部の組織では巨大な3Dデータファイルを確認する必要がある場合もありますが、日常的なコラボレーションのワークフローでは、比較的少量のデータで十分なケースがほとんどです。こうした用途において、3D PDFは非常に適したソリューションです。一方で、大規模なデータファイルを扱う際には、3D PDFの処理が遅くなる場合もあります。そのような場面は、3D PDFが3D CADデータを伝達する最適な手段ではないケースだと言えるでしょう。ちょうど、5,000ページにも及ぶ文書をWebベースのPDFビューアで閲覧しないのと同じように、組織が扱う最大規模のデータファイルを3D PDFで利用することは、実際にはほとんどありません。
まとめると、3D PDFは、チームが日常的に行う最も一般的な業務に適した、手軽で便利な3Dデータ形式です。一方で、数千点もの部品を含む複雑な3D CADアセンブリを扱う必要が生じた場合には、それに適した専用ツールを使用すべきです。コンビニには歩いて行き、空港へは車で向かう。用途に応じて、適切なツールを使い分けることが重要です。
# Mistake7:3D PDFファイルで3D CADデータを編集できると期待してしまうこと
3D PDFが自動車全体のようなフルアセンブリを扱うために設計されていないのと同様に、3D CADデータを複数人で同時に相互編集する用途を想定したものでもありません。
当社の3D PDF製品をご検討いただく際、「3D CADデータを直接編集できるか」というお問い合わせを多くいただきます。具体的には、製造エンジニアからのフィードバックを書き込むことや、CAEエンジニアの要望に基づいて穴形状を修正すること、あるいは複数の関係者が同時に3Dファイルを編集しながら設計変更を行う、といった使い方を想定されるケースです。
3D PDFはドキュメント形式であり、設計データの共有に最適化されたもので、インタラクティブかつ同時並行的なコラボレーションを目的としたものではありません。私たちは、3D PDFを紙の図面(ハードコピー)と同様のものとして捉えていただくことを推奨しています。この「静的」であるという特性こそが、3D PDFというフォーマットの信頼性の高さを支える重要な要素です。例えば、請求書が送付された際、その内容が別の場所から勝手に書き換えられることはない、という信頼があります。3D PDFも同様に、内容が容易に改変されないことが前提となっています。設計の修正や改善は可能ですが、それらは設計部門において、明確に「設計変更」として管理・実施されるべきものです。プロセスの各段階でファイルにアクセスできるチームは、3Dデータの確認、断面表示、回転といった操作を行うことはできますが、元となる設計データそのものを編集することはできません。
まとめ:3D PDFをひと言でまとめると
3D PDFは、3D CADデータの情報量と、2Dドキュメントの共有のしやすさを両立させる手段を、組織に提供します。日常業務における強力なコミュニケーションツールではありますが、インタラクティブなコラボレーションソフトウェアでもなければ、フォトリアルなレンダリングツールでもなく、巨大なデータファイルを扱うためのビューワでもありません。3D PDFは、社内外に対して、より完全で安全な情報を、使いやすく、かつ閲覧無料の形式で提供する実務向けの“主力ツール”です。
まずはSpinFireの体験版をダウンロードし、ネイティブのCADデータやPMI情報が含まれている3Dモデルを3D PDFに変換して社内で共有してみましょう!