株式会社データ・デザイン DesignX|ソリッド対応三次元リバースモデラ

CASESTUDY 導入事例

Geomagic DesignX工業デザイン&製造Artec Eva

3D スキャナー& Geomagic Design X によるリバースエンジニアリングで年来の課題を解決し、埋もれていた巨大なニーズを顕在化

株式会社ダイモール

2021.07.14 更新

Artec Leo

①「Geomagic Design X」によるモデルの生成 ② FARO「EDGE」3D スキャナの設置状況
③「Geomagic Design X」による作業 ④ 工場内の加工設備 ⑤ 手作業による加工作業

リバースエンジニアリングの手法を駆使して「下請け」を脱出上流工程から納品後まで含めた高付加価値な金型請負事業を目指す

限りない加工精度向上のニーズに応えるために
リバースエンジニアリングの技術に注目したのは2013年のことです。お得意様から当社へ新しい仕事の引き合いがあり、それが1つのきっかけになりました」。そう語るのは株式会社ダイモールの副社長、大杉謙太氏である。石川県小松市に本社を置くダイモールは、鋳造向け金型の設計・開発を主業とする金型メーカー。自動車や建設機械などの部品金型から加工難度の高い耐熱合金のタービンブレード用金型、さらにはタイ焼き型の金型まで幅広くサポートし、豊富なノウハウと高度な技術には定評がある。近年はタービンブレードの仕上げ加工も任され、難切削材加工でも知られるようになった。大杉氏がいう「リバースエンジニアリング導入のきっかけ」とは、このタービンブレードの加工に関わるものだった。

「火力発電所の発電機のタービンブレードは、高温高圧下で稼働するため特殊な耐熱合金が使われ、加工が困難な鋳造品です。しかも、その波打つ翼のような形状も加工を難しくしており、独特なノウハウが必要です。実はこれが金型作りのノウハウと直結しており、当社では前述した独自の難切削材加工技術とこれを組合せることでタービンブレード加工を可能にしています」。鋳造品には熱による収縮や反り、歪みなどの変形が付き物で、0,1mm未満のバラつきが発生する。それでも通常の金属なら、そのまま仕様に沿って削れば最終的には問題なく製品形状を作りだせる。しかし、切削難度の高い耐熱合金の場合、0,1mm未満のバラつきが切削性に大きな影響を及ぼすのである。
「予想以上に肉厚だったり薄かったりすると加工条件が大きく変わり、切削が非常に難しくなります。特に厚過ぎると工具が負けて破損しかねないし、そうでなくても負荷がかかり過ぎ加工自体が逃げてしまうのです」。当然、修整が必要になるが、すると今度は翼面という捉え所の無い形状が問題になる。ノギスやマイクロメータ等で摘んで測ろうにも、場所により厚みが異なる翼面のどこを測ればよいのか、判断しようがないのだ。

「お客様は当然、後工程のそんな手間は減らしたいわけで。もっと“攻めて” 加工精度を向上させてくれと当社に依頼があったのです。そこで 2013年にまず、より高精度な加工機を導入しましたが、それも十分ではありません。どうすればよいか、悩み、考え続けるなかで着目したのが、ウチには無理だと諦めていたリバースエンジニアリングの手法だったのです」。鋳造したタービンブレードを 3D スキャンして 3D モデルを作成し、理論上のモデルと重ね合わせれば偏差が求められる。その偏差に基づいて補正し、加工していけばよいのではないか──大杉氏はそう考えたのである。さらに従来の金型関連の仕事等でも、リバースエンジニアリングを活用できる可能性が見えてきたことから、導入の機運が急激に高まったのである。こうして2015年、大杉氏の指揮のもとダイモールは「ものづくり補助金」を利用し、FAROの「EDGE」3D スキャナーに 3D システムズのリバースモデリングソフトGeomagic Design X 、3D 検査ソフト等を導入した。「3D スキャナーは FARO の EDGE を、またリバースモデリングソフトは3D Systems の Geomagic DesignX を選びました。3D スキャナーはいろいろ比較検討し、金型等の形状取得にアーム式が向いていると判断しましたが、Design X については即決で導入を決めました。
実際、DesignX は必要な機能をフルに備えた唯一のリバースエンジニアリング・ソフトで、正直いって他に比べるものがありませんでしたね」。

リバースエンジニアリングで切り開く新フィールド
Geomagic Design X は、履歴ベースの CAD 機能と 3D スキャンデータ処理機能を融合したリバースエンジニアリング・ソフト。 3D スキャンしたデータから、汎用的な CAD ソフトと互換性のあるフィーチャー・ベースのソリッドモデルを作れる唯一の選択肢である。

「実は導入時、曲面作成に向いたソフトとして Geomagic Wrap も導入したんですが、実際にはほとんどの案件が Design X で対応できました。インタフェイスなど使い勝手も優れているし、最近はほぼ全て Design X で行っています。Wrap の機能も Design X に統合されてきましたしね」。もちろん当初は戸惑いもあったが、大杉氏はこれをあえて実務へ投入。サポートも積極的に利用しながら約3カ月で修得したという。
「ブレードから通常の工業製品金型、タイ焼きならぬ“ゆるキャラ”焼きまで、3カ月で約5案件に取組み、Design X の多様な機能個々の向き不向きを見極めました。差し迫った実務で使ったからこそ身についたんですよ」。
この3カ月間の運用でもう一つ大きな発見があった。タービンブレード以外の分野へのリバースエンジニアリングの応用法を次々と見出したのだ。たとえば前述の「ゆるキャラ焼き」もその一つ。この案件の発注元は地域の商店街組合などが中心で図面や 3D モデルは用意されていない。多くはぬいぐるみのモック等を設計図代わり依頼される。つまり、形状はあるものの、それを数値化する手段がなかったのだ。
「人形焼きなので1~2mm程度の狂いは問題なく、そのキャラクタの形でありさえすればいいんです。ならばモック自体を 3D スキャンし、Design X で再現してしまうのが一番早い。このやり方で、ゆるキャラ焼き関連の仕事も拡大しています」。
そして、もう一つ。同社の通常の金型製作の分野でもリバースエンジニアリングを生かした新しい仕事が生まれ、成長し始めているのである。

より付加価値の高い金型請負ビジネスを目指して
「鋳物は温度や組成の条件が一定でなく、理論通りの鋳物が量産できるか、やってみなければ分らないことも多々あります。問題は量産してみたら歩留まりが悪いという場合で、鋳造メーカーは当然その金型を修整したがりますが、どうしても修整しきれないケースも多々あるのです」。
たとえば歩留まりの良い金型が老朽化したので、設計図に基づいて作り直したらなぜか歩留まりが悪化してしまう──といったケースがそれだ。設計上は同じなのになぜ歩留まりに差が出るのか? 従来は原因不明のまま、職人の勘に頼って直していたが、一度で成功するのは稀で、トライアル&エラーを繰り返し、それでも対応しきれなければ「できない」と諦めるしかなかった。いわば職人の経験値が鋳造の生産性に直結していたのである。
「その話をあるお客様に聞かされて、思いついたのです。もしかして、歩留まりの良い金型と悪い金型両方を 3D スキャンして調べれば、原因を捕まえられるかもしれない、と。そこで“やってみましょうか?”と持ちかけてやってみたら、きれいに原因が突き止められたのです」。設計上は同じでも3D スキャンして調べてみるとやはり差異があった。元になる 2D 図面が不完全だったため、図面解釈の違いで 3D に立上げた時の形状が変化してしまっていたのである。
「図面があてにならないので、最終的にはリバースしたモデルでそのまま金型を再現しました。Design X できちんと作ればリバースしたモデルからでも、ちゃんとした最終製品が作れるんです」。それ以降 “そういう悩み”の解明依頼がどんどん来るようになった、と大杉氏は語る。特にこのお客様に関しては売上が30%も拡大し、リバースエンジニアリングや 3D 評価の案件についてダイモールの独占となった。さらに自動車の板金メーカーなど、従来付合いがなかった他業界の顧客からも声がかかっているという。従来解決できなかった課題をリバースエンジニアリングでクリアすることにより、埋もれていた巨大なニーズが顕在化したのである。
こうした発注の多くは、鋳造メーカーの「どうも上手くいかないので調べてくれ」といった曖昧な依頼から始まる。大杉氏らがリバースエンジニアリングを駆使して調べ上げ、詳細なレポートを提出すると、お客様は “なるほど、ではこう修整しよう”と応えるのだ。今までお客様の外注先の1つに過ぎなかったダイモールが、いまや対等な立場でサポートを提供し、業界の上流工程へ進出し始めたのである。
「こうしてリバースエンジニアリングを駆使してお客様の課題解決を図っていくことで、私たちも業界の上流へ食い込んでいく計画です。金型設計についても、ただ言われた通り作るだけでなく「こうすべきでは」と提案するなどしていきます。最終的には、上流工程から納品後まで含めた付加価値の高い金型請負ビジネスを展開していきたいですね」。

株式会社ダイモール http://www.dymol.co.jp/
代表者/代表取締役 大杉忠夫
本社所在地/石川県小松市
創業/1948年 設立/ 1963年 
事業内容/鋳造向け金型の設計・開発、耐熱合金の請負加工 ほか



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